世界日報 Web版

年金支給漏れ、徹底調査でうみを出し切れ


 日本の年金制度は本当に信頼に足るものなのか。こうした懸念を抱かざるを得ない事態が生じた。

 元公務員らが対象の共済年金を受給中の配偶者ら約10万6000人に「振替加算」と呼ばれる加算額の支給漏れがあった。未払い総額は約598億円に上り、支給漏れとしては人数・額ともに過去最大だ。

 人数・額とも過去最大

 振替加算は、加給年金の対象だった厚生年金や共済年金受給者の配偶者に対し、一定額を基礎年金額に上乗せするものだ。加給年金とは、配偶者や18歳未満の子供を養う年金受給者に一定額を加算する仕組みで、配偶者本人の年金に上乗せされるのは支給開始年齢の65歳からとなっている。

 今回の支給漏れで、未払い額の平均は1人当たり約56万円に上る。振替加算が創設された1991年から今年まで未支給だった人は約590万円に達するという。これほど大規模な支給漏れが見過ごされていたことにあきれる。

 国会の閉会中審査では、日本年金機構の水島藤一郎理事長が昨年11月に支給漏れを把握していたが、加藤勝信厚生労働相に全容が報告されたのは今年8月24日だったことが明らかになった。危機感に欠けた対応だとしか言いようがない。猛省を求めたい。

 支払われるはずの年金をもらえずに亡くなった人は約4000人に上る。年金機構は、こうした人たちの遺族も含め未払い分を支給するが、それで済む問題ではない。

 支給漏れの主な原因は、年金機構と共済組合の連携不足だ。支給漏れが起きたのは、夫婦のどちらかが共済年金に加入していたケースがほとんどだ。共済年金の加入記録は各共済組合、基礎年金記録は年金機構が管理している。

 2015年に厚生・共済両年金が一元化した後も、事務組織は縦割りで情報共有ができていなかった。年金機構は各共済組合から加入者データの提供を受け、それを基に振替加算を支給してきたが、データの誤りを確認できていなかった。再発防止に向け、組織の統合も検討すべきだろう。

 年金に関して、年金機構は前身の社会保険庁の時代から不祥事を起こしてきた。03年には、振替加算で約300億円の未払いが発覚。07年には、持ち主不明の年金記録が約5000万件あることが判明した。

 このため社保庁は09年に廃止され、10年に年金機構が発足した。しかし2年前には、125万件の個人情報を流出させて不信を増大させた。

 今回の支給漏れは、年金機構が社保庁の「ずさんな体質」を受け継いでいることを示したと言える。ほかにも支給漏れがないか徹底調査し、うみを出し切らなければならない。

 責任の重さ自覚せよ

 少子高齢化が進む中、社会保障制度改革は大きな課題となっている。

 改革への理解を得るには、年金制度への信頼が欠かせない。支給漏れなどは言語道断だ。年金機構の職員は責任の重さを自覚する必要がある。