世界日報 Web版

北ミサイル通過、避難と迎撃に万全を期せ


 北朝鮮が、首都・平壌に近い順安から弾道ミサイル1発を北東に向け発射し、数分後に北海道の上空を通過した後、襟裳岬東方1180㌔の太平洋上に落下した。航空機や船舶への被害は報告されておらず、幸い日本への落下物もなかったようだが、ミサイルの上空通過は安全保障上の重大な脅威だ。断じて許されない蛮行であり、日本は国際社会と連携し北朝鮮を厳しく糾弾しなければならない。

 面食らい戸惑う住民

 北朝鮮のミサイルが沖縄以外の日本上空を通過したのは2009年以来のことで、金正恩体制になってからは初めてだ。

 政府は北海道や東北など12道県で全国瞬時警報システム(Jアラート)を作動させ、発射約4分後に「発射情報」を、また約16分後には上空を飛んだという「通過情報」をそれぞれ伝えた。だが、あっと言う間の出来事に面食らった住民も少なくなかったようだ。

 テレビでは頑丈な建物や地下への避難を呼び掛け、携帯電話のJアラートの着信音が鳴るなどしたが、実際にはどう動けばいいのか戸惑ったという声も少なくなかった。事態の深刻さを考えた場合、北朝鮮弾道ミサイルの攻撃や落下を想定した避難訓練が今後、職場や学校などで日常的に不可欠になってくるかもしれない。

 安倍晋三首相はミサイルの動きを発射直後から完全に把握し、国民の生命と安全を守る万全な態勢を取っていると述べた。その言葉通りであれば安心だが、こと安全保障においては万が一を考える必要もある。

 防衛省は来年度予算編成で地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を要求する予定だ。大気圏外でミサイルを打ち落とす「SM3」の展開能力を高め、迎撃体制を強化することを狙う。こうした補強を急ぎ、北朝鮮に対する抑止力をさらに高めていくことが必要だ。

 今回のミサイルは最大高度が約550㌔で、2700㌔余り飛行したとみられ、北朝鮮が今月、「包囲射撃」を検討していると威嚇していた米領グアムを射程に入れた中距離弾道ミサイルの可能性が指摘されている。トランプ米政権に対する揺さぶりも狙ったのだろう。

 それにしても「またか」と思いたくなるほど北朝鮮は頻繁に各種弾道ミサイルの発射を繰り返している。今回は米韓合同軍事演習への対抗措置という意味も含まれているのだろうが、最終的に最高指導者・金正恩朝鮮労働党委員長は米国とその同盟国である日韓両国に対し、あらゆる射程のミサイルを、いつどこからでも発射し、それに核弾頭を搭載できる準備が整ったと誇示したいのだろう。

 しかし、「核保有」を前提に米国などに交渉を持ち掛ける北朝鮮の戦略は絶対に認められない。独裁国家の核ほど周辺国にとって深刻な脅威はなく、何よりも平和と安全を願う国際社会の一貫した潮流に逆行する。

 日米韓で封じ込めを

 来月9日は北朝鮮の建国記念日で、この前後にまた武力挑発をする恐れもある。日米韓3カ国が連携を強め、北朝鮮の核・ミサイル戦略を封じ込めるしかない。