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相模原事件1年、措置入院制度の強化急げ


 相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害され、27人が重軽傷を負った事件の発生から1年が経過した。

 元職員植松聖被告は事件前、障害者を差別視して殺害を予告する発言を繰り返し、精神保健福祉法に基づく措置入院とされたが、事件を防げなかった。措置入院制度の強化を急ぐ必要がある。

 障害者殺害を正当化

 植松被告は昨年7月、包丁など5本を持って津久井やまゆり園に侵入。職員を拘束し、19~70歳の入所男女19人を殺害して職員3人を含む27人に重軽傷を負わせるなどした。抵抗できない障害者を狙った犯行で、死者数は戦後最悪とも言われる。

 最近のメディアの取材に、植松被告は「不幸が蔓延(まんえん)している世界を変えることができればと考えた」「意思疎通ができない重度障害者は不幸をばらまく存在で、安楽死させるべきだ」と主張。殺害を正当化する考えに変化は見られない。

 これでは被害者の遺族はやりきれないだろう。極めて独善的な考えによって卑劣な凶行を引き起こし、遺族の気持ちを踏みにじったことは決して許されるものではない。厳しい処罰もやむを得まい。

 だが、植松被告の公判の見通しは立っていない。弁護側が再鑑定を求める可能性もあるため、初公判が数年後となることもあり得るという。一日も早い公判開始と事件の徹底解明を強く求めたい。

 植松被告は措置入院とされたが、退院後は支援がなく孤立を深め、凶行に及んだとされる。措置入院は、精神障害を持つ人が自分や他人を傷つける恐れがある場合、都道府県知事や政令市長が本人や家族の同意がなくても入院させることができる制度だ。植松被告は「大麻使用による精神障害」と診断されたが、警察や自治体、病院との連携もなく、措置入院制度は機能しなかった。

 精神保健福祉法改正案では、自治体側に退院後の支援計画の作成を義務付け、作成のための地域協議会に警察も参加することを定めた。法案は参院で可決されたが、衆院では継続審議となった。野党や障害者支援団体などは改正案について「監視の強化」などと主張している。

 しかし、これまでも措置入院を経た元患者による凶行は繰り返されてきた。1986年に岩手の県立病院を抜け出した男が横浜で警察官を殺害した。2001年には大阪教育大付属池田小学校に侵入した男が8人の児童を刺殺。さらに15年には兵庫県洲本市で男が住民5人を刺殺した。

 今のままでは同種の事件を防げない。犠牲者が出てからでは遅いのだ。秋の臨時国会で法案を成立させ、措置入院制度の強化を急ぐ必要がある。野党が抵抗するのは無責任だ。

 再発防止を徹底せよ

 欧米では重大な触法行為を犯した精神障害者に対し、犯罪予防的な「治療処分」が制度化され、裁判所が専門病院への強制入院を命じることができる。

 こうした事例も参考にし、今回のような事件の再発防止を徹底すべきだ。