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露軍機撃墜、IS掃討作戦に齟齬を来すな


 トルコ軍機が領空を侵犯したとしてロシア軍機を撃墜したことで、双方が非難の応酬を繰り広げている。

 パリ同時多発テロ後、過激派組織「イスラム国(IS)」掃討を目指す国際包囲網構築の兆しが見えてきたが、この件でほころびつつあるのは残念だ。

トルコは領空侵犯と主張

 トルコ側の説明によると、ロシア軍機がトルコとシリアとの国境近くでトルコ領空を侵犯。複数回の警告にもかかわらず退去しなかったため、交戦規定に基づき警戒飛行中のF16戦闘機2機が撃墜した。

 これに対してロシアのプーチン大統領は侵犯を否定し、トルコに強く反発している。さらにラブロフ外相のトルコ訪問中止とトルコ産農産物の輸入制限などの対抗措置を取った。

 トルコが加盟する北大西洋条約機構(NATO)はトルコの主張を支持。領空侵犯についてロシア軍機がトルコから警告を受けていたことを確認した。だが、非難合戦は何も生まない。この件でNATOとロシアの関係が緊張すれば、肝心のIS掃討作戦に齟齬を来すことになりかねない。大切なのは、まず事態の鎮静化を図り、次いで再発防止の具体策を講じることだ。

 国連安全保障理事会はテロ防止決議を全会一致で採択した。英国はシリアに空爆を拡大する方針だ。フランスは空母投入でISの拠点を空爆し、軍事作戦を本格化させている。

 訪米したフランスのオランド大統領とオバマ米大統領の首脳会談で、両首脳は「最優先事項は両国の緊張緩和だ」(オバマ氏)との認識で一致し、トルコ、ロシア双方に自制を求めた。だが、プーチン大統領はモスクワでのオランド大統領との会談で「(ISから)密輸される石油は昼夜、トルコに向かっている」とトルコ批判を展開した。

 問題を複雑にしているのは、シリアに対するロシアと米仏の立場の相違だ。シリアはアサド政権、反体制派、ISという三つ巴の内戦になっているが、ロシアが支持するのは親露派のアサド政権だ。このためロシアのシリアでの空爆はISだけでなく、トルコや米国など有志国連合が支援する反体制派をも対象としている。

 一方、米仏首脳会談で両首脳はアサド政権の退陣を求める意向を改めて確認した。国民の支持を受けていないアサド大統領ではシリア内戦の解決も不可能であり、シリアの未来はないとの認識からである。

 重要なのは、残虐なテロを繰り返すISの撃滅こそ当面の目標であるという認識の共有だ。シリアの内戦については、まずアサド政権と反体制派との停戦交渉の開始が求められる。続いて暫定政権を目指す動きを国際社会は加速化させるべきだ。

対テロで包囲網構築を

 オランド大統領はIS対策として、ロシアを含む包囲網の結成を唱えている。オバマ大統領は、ロシアがアサド政権支持ではなく、ISとの戦いに集中するのであれば可能との考えを示した。

 ロシアと米仏、トルコなどが反テロの目標で一致し、対ISで包囲網を構築することで新しい展望が開けるのではないか。

(11月29日付社説)