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杭打ち不正、「安全第一」貫ける建設業界に


 旭化成建材が行った杭打ち工事の不正問題で、過去約10年間に手掛けた3052件を調査した結果、360件で工事データの流用など不正が判明した。不正に関与した現場担当者は61人に上った。

 住民の安心と信頼を大きく揺るがす事態だ。建設業界は「安全第一」を貫けるように生まれ変わらなければならない。

 背景に「多重下請け」

 不正が行われたのはマンションなど集合住宅のほか、医療福祉施設や学校など公共性の高い建物も含まれる。不具合は今のところ、横浜市都筑区の1棟が傾いたマンション以外では確認されていないが、それで許されるわけではない。

 杭工事の担当者196人中61人が不正に関わっていたという事実も衝撃的だ。旭化成建材は当初、横浜のマンションの担当者に限定されるとの見方を示していた。業界大手のジャパンパイルでも同様の不正のあったことが判明している。自分たちに注がれる視線が厳しさを増していることを建設業界は自覚すべきだ。

 不正の背景には、下請け業者が複数入る「多重下請け」の問題がある。横浜のマンションの場合、元請けが三井住友建設、1次下請けが日立ハイテクノロジーズで、さらにその下請けとして旭化成建材が杭打ち工事を行った。下請けが多重であるほど手抜きやデータ不正などが生まれやすくなるとされる。

 元請けには末端の作業員まで監督する責任があるが、三井住友建設の責任者は横浜のマンションの杭打ち工事に立ち会わなかった。日立ハイテクノロジーズにも工事を一括して他社に請け負わせる「丸投げ」の疑いがある。「丸投げ」は建設業法で禁じられているものだ。

 この工事が行われた2005~06年、杭が支持層(強固な地盤)に届いたことを示す電流計のデータは紙で印刷していたため、雨で濡れたりすると取り直すことができなかった。こうした場合に他のデータを流用して元請けに報告していたとみられる。不正は半ば常態化していたとも言われる。元請けの側でもデータを軽視する傾向があったようだ。

 建設会社が加盟する「日本建設業連合会」は、業界で統一した杭打ち施行の管理指針づくりを本格化させる。データの流用ができないように紙を使わず、電子的に保存する管理方法を徹底する方針だ。国土交通省の有識者委員会も年内に再発防止策などの中間報告をまとめる予定だが、信頼回復には実効性ある対策が欠かせない。

 今回の問題では、工期厳守を下請けに求める元請けの圧力も指摘されている。横浜のマンションでは8本の杭が不完全だったが、これらは全て工期終了直前に打ち込まれた。杭の長さが足りない場合、新しい杭を発注し直すために工期が延びる。担当者は工期の遅れを懸念してデータの流用などを行ったとみられる。

 工期優先は本末転倒

 工期優先で安全が軽視されるのは本末転倒だ。このような業界の体質を改善しなければ、不正を根絶することはできないだろう。

(11月25日付社説)