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日韓首脳会談、関係改善の第一歩としたい


 安倍晋三首相と朴槿恵大統領による日韓首脳会談がソウルで開かれた。両国首脳の会談は実に3年半ぶり、両首脳同士が第三者を交えず正式に会談するのは初めてだ。遅きに失した感は否めないが、これを冷え込んでいた関係の改善へ向けた第一歩としたい。

「慰安婦」問題では溝

 2012年8月の李明博前大統領による竹島上陸を発端に広がった日本の「嫌韓」感情と、安倍首相の政策を“右傾化”と批判し高まった韓国の「反日」感情がぶつかり合い、両国関係は近年まれに見るほど悪化した。

 安倍首相は「常に対話の扉は開かれている」「問題があるからこそ会談すべき」という姿勢で終始一貫していたが、朴大統領はいわゆる「従軍慰安婦」問題で韓国の納得する形で日本が解決策を示すことを首脳会談の前提条件に突き付けた。入り口に「慰安婦」問題を置いたことが、首脳会談をここまで遅らせてしまったと言える。

 韓国が頑なに拒否してきた日本との首脳会談に応じた背景には、北東アジアの安全保障で日米韓3カ国の連携を重視するオバマ米大統領の強い要請があったとされる。韓国国内では日韓首脳会談が長く開かれていないことへの懸念が広まっていた。自らが議長国だった日中韓首脳会談の開催を利用し、「反日」世論から批判されにくい形で安倍首相との会談に臨めた。

 両首脳は「慰安婦」問題について早期妥結へ交渉を加速させることで一致したが、1965年の日韓基本条約で一切の請求権問題が「完全かつ最終的」に解決されたとする日本と、今なお同問題を両国関係の「最大の障害物」と位置付ける韓国との間にある溝は埋まっていない。

 いつの間にか「慰安婦」問題が最重要の懸案であるかのような世論が韓国で定着してしまったのは残念だ。韓国の歴代政権はこの問題を対立の争点とするよりは、管理することに重点を置いてきた。日韓両国は北東アジアで自由民主主義と市場経済という価値観を共有し、独裁体制を続ける北朝鮮の武力挑発などを防ぎ、経済協力をさらに進展させていくという共通の目標を持っているはずだ。韓国は優先順位を間違っていないか。

 反省すべき点は日本側にもある。首脳会談の遅れは相手国への不信感を募らせ、特に日本人の韓国に対するイメージが大きく損なわれた。これに乗じ「嫌韓」感情を煽る主張が幅を利かせ、一部では事実に基づかない推測を根拠に挙げて批判を展開するマスコミもあった。ナショナリズム(国粋主義)を高揚させるだけでは国益は守れない。

 安倍首相は今回の会談で、海洋進出の一環として南シナ海で人工島建設を進める中国を牽制する米国への支持を表明したが、朴大統領から明確な返答があったか定かでない。韓国は韓半島の南北統一を視野に戦略的に中国に傾斜している。今後、対中観の違いは日韓間の新たな火種になる可能性がある。

安保・経済で対話を

 首脳会談実現を無駄にせず、日韓間に漂っていた閉塞感を解消するためにも、喫緊の課題である安保・経済などで対話を重ねていくことが不可欠だ。

(11月4日付社説)