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日露領土交渉、時には待つことも必要だ


 モスクワで日露外相会談が行われたが、ロシアのラブロフ外相は「北方領土問題は議論していない」として、日本側と領土交渉を行うことを拒否する姿勢を明確にした。このような状況下で功を焦ってはならない。我々の忍耐が問われよう。

 外相会談で露が強硬姿勢

 最近のロシアの行動は常軌を逸している。昨年9月にイワノフ大統領府長官が択捉島を訪れて以降、閣僚の北方領土訪問は鳴りを潜めていた。しかし、7月にスクボルツォワ保健相が色丹島に行ったのを皮切りに、8月には日本政府の再三の反対を無視し、メドベージェフ首相が択捉島を訪れた。

 9月に入っても閣僚の訪問は続いている。さらに対日交渉を担当するモルグロフ外務次官は「(領土問題を)協議するつもりはない。70年前に解決済み」と発言。ロシア外務省はこれを「公式見解」と確認した。

 今回の会談でラブロフ外相は「会談で北方領土問題は議論していない。議論したのは平和条約締結問題だ」と強調。四島が第2次世界大戦の結果、ロシアの領土になったとの主張を踏まえ、「日本が歴史の現実を受け入れて初めて問題の進展が可能になる」と日本側を牽制(けんせい)した。

 以前にもまして強硬な姿勢で対日交渉に臨むのは、ロシアの国内情勢と無縁ではない。ウクライナ危機を受けた欧米の対露経済制裁開始から1年半が過ぎ、国際的なエネルギー価格の下落で打撃を受けるロシア経済に追い打ちをかけている。

 2015年第2四半期(4~6月)の国内総生産(GDP)は前年同期比4・6%減少。第1四半期のマイナス2・2%から一段と落ち込んだ。ルーブルの暴落によりインフレが加速しており、6月のインフレ率は15・3%。物価上昇が国民生活をじわじわと締め付けており、貧困率は16%に上昇した。

 国民の不満の矛先を政権ではなく外国に向けさせるため、プーチン政権は事実上、政府の統制下にあるマスコミをフル活用し、国民の愛国心を鼓舞し続けている。対露経済制裁で欧米と足並みを揃え、ロシアとの間に領土問題を抱える日本は、その格好の標的である。「クリミアをアメリカ人には渡さない。クリル(北方領土)を日本人には渡さない――」。ロシアのインターネット交流サイト(SNS)では、このようなフレーズが飛び交っている。

 ラブロフ外相は領土問題で極めて強硬な一方、プーチン大統領の訪日には前向きの姿勢を示した。だが、「首脳会談に前提条件を付けるのは非生産的だ」として、領土問題などに関係なく、無条件で訪日させるよう暗に迫った。大統領訪日を、対ロシア包囲網の突破口にしたい思惑も見え隠れする。

 主導権を握られるな

 北方領土返還は、ロシアとの交渉を通じてのみ可能だ。われわれは返還が実現するまで、それを続ける必要がある。しかしこのような状況下では、われわれの忍耐が試されよう。ロシアの強硬姿勢は直面する窮状を反映している。相手が音を上げるまで待つことも時には必要だ。功を焦るあまりロシアに交渉の主導権を握られてはならない。

(9月25日付社説)