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廃炉工程見直し、スピードより着実な作業を


 政府は東京電力福島第1原発の廃炉作業について、1~3号機の使用済み燃料プールに保管されている核燃料の取り出し開始時期を、最大で3年遅らせることを決めた。廃炉完了まで30~40年とする従来の目標は維持する。
 
リスク減らすことに力点

 これまで2015年度上半期としていた3号機プールの燃料取り出し開始は17年度に、17年度下半期だった1、2号機プールは20年度に遅らせる。

 放射線量が比較的低い4号機は作業員が原子炉建屋に入れるため、昨年12月に燃料の取り出しが完了した。だが水素爆発で建屋が大破した3号機は、プールのがれきの撤去が難航。放射線量も想定通りに下がらず、15年度上半期の取り出し開始は事実上不可能になっていた。

 工程の見直しは、スピードを優先する従来の方針を転換し、リスクを減らすことに力点を置いた。

 スケジュールを守ろうとしたために現場でトラブルや事故が増え、逆に作業の遅れを招いたことを踏まえたものだ。事故を防止し、着実に作業を進めることが求められる。

 廃炉成功の鍵を握るのは、1~3号機の原子炉内部で溶け落ちた燃料(デブリ)をどのように取り出すかだ。格納容器を水で満たして放射線を遮った上で取り出す「冠水工法」や、水がないことを前提に格納容器の側面から取り出しを目指す工法などが検討されている。開始時期については、最も早い場合で21年中とする目標を維持した。

 「冠水」は、漏水個所を補修したり、大量の水をためた時に格納容器が地震に耐えられるか調べたりする必要がある。一方、水がない場合は作業員の被曝(ひばく)を軽減し放射性物質の飛散を防がねばならない。

 政府は18年度上半期までに最初の取り出し場所を決め、工法を確定させる目標を示している。これを達成するには、デブリの様子や位置を特定することが欠かせない。東電は今年4月、1号機の格納容器にロボットを投入し、内部の調査を始めた。ロボットの性能向上などが求められよう。

 デブリを取り出すには、汚染水の増加要因となっている地下水の流入を止める必要がある。汚染水は現在、1日約300㌧発生している。政府は凍土遮水壁などを導入し、16年度中に1日100㌧未満に抑えるとしている。

 建屋周囲の井戸「サブドレン」からくみ上げた汚染水を浄化して海に流す計画も実現しなければならない。しかし、2月に発覚した汚染水の外洋流出で漁業者の不信が高まったため、同意を得られていない。東電は計画について丁寧に説明し、理解を求めるべきだ。

 廃炉作業を監視する「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」の役割も重要だ。昨年8月に発足した同機構は、廃炉に関して東電を指導するほか、関連技術の研究開発も行う。

 技術面で十分な支援を

 デブリ取り出しは、ロボットアームによる前例のない難作業になるとみられる。機構が技術面で東電を十分に支援することが不可欠だ。

(6月17日付社説)