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日中首脳会談、中国の牽制に動揺するな


 安倍晋三首相と中国の習近平国家主席がアジア・アフリカ会議(バンドン会議)の60周年記念首脳会議が開かれたインドネシアで会談した。両首脳の対話は昨年11月に北京で行われて以来5カ月ぶり。日中の関係改善がアジア太平洋地域や世界の安定に貢献するとの認識を共有し、戦略的互恵関係を推進していく方針で一致した。

 AIIBめぐる駆け引き

 今回の会談では笑顔のなかった前回の険悪なムードが消え、習主席は冒頭、微(ほほ)笑みながら安倍首相と握手を交わした。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)参加に慎重な日本を懐柔する狙いがあったとみてよい。

 現に習主席は「AIIBはすでに国際社会から普遍的に歓迎されている」と強調し、参加を呼び掛けた。安倍首相は「アジアには高いインフラ需要がある」とAIIBの意義を評価する一方、不透明な運営方法や融資審査など問題点を提起した。これは正しい。慌てて参加しなくてもいいし、米中関係の推移を見極める必要があるからだ。

 世界第2の経済大国となった中国は世界銀行やアジア開発銀行(ADB)などで先進国の影響力が強いことに不満を持っている。このため、中国主導のAIIBをつくった。

 アジアのインフラビジネスを日本と競い合う韓国は米国の反対を押し切って参加した。米中間の「綱引き」で中国が勝ったと言える。その勢いに乗って、中国は日中首脳会談で日本国内世論を揺さぶり、安倍政権を取り込もうとしたと考えられる。

 しかしAIIBが中国の国益優先で動くのであれば、日本は参加せず、日米で育てたADBを大切にすべきであろう。

 今回の首脳会談での中国側のいま一つの狙いは、今夏発表される予定の戦後70年談話への牽制(けんせい)だとみてよい。習主席は安倍首相に「日本がアジアの近隣諸国の関心に真摯に向き合い、歴史を直視するとの積極的な発信をするよう望む」と語り掛けた。中国が談話を注視していることに注意を喚起したのだ。

 背景には、バンドン会議での安倍首相の演説が、10年前の2005年4月に同じ場所で行われた当時の小泉純一郎首相によるものと内容が様変わりしたことがある。小泉演説は「植民地支配と侵略によって、多くの国々に多大の損害と苦痛を与えた」「痛切なる反省と心からのおわびの気持ち」など村山談話の文言をそのまま引用した。

 安倍首相はこうした表現を使わず、60年前に採択され、「侵略、武力行使によって他国の領土保全や政治的独立を侵さない」ことなどを打ち出したバンドン10原則を「日本は先の大戦の深い反省と共に、いかなるときでも守り抜く国であろうと誓った」と述べた。首脳会談では「歴代内閣の歴史認識を全体として引き継いでいる」と強調。その上で「先の大戦への反省の上で平和国家として歩んできた」と訴えた。

 村山談話踏襲の必要なし

 日本は中国の牽制に動揺する必要はない。

 安倍首相は村山談話を踏襲せずとも、独自の言葉で反省を述べればよい。

(4月24日付取設)