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都知事の“地ならし”を日韓関係の打開に生かせ


 姉妹友好都市の韓国・ソウル市を訪問した東京都の舛添要一知事が朴槿恵大統領と会談し、日韓関係改善を望む安倍晋三首相のメッセージを伝えた。

 朴大統領が日本側要人と個別に面会するのは、昨年2月に大統領就任式に出席した麻生太郎副総理兼財務相以来で、極めてまれだ。今回の対話によって、冷え込んだ日韓関係の打開へ一歩前進したと言えよう。

 客船沈没事故に哀悼の意

 日韓首脳会談実現を困難にしているのは、反日に凝り固まった韓国の国民感情と、それをあおり立てるマスコミだ。韓国で反感の少ない都知事が、国家レベルの親善外交の“地ならし”に乗り出したことは極めて有意義である。安倍首相には、この成果を生かすことが求められる。韓国の主要メディアの中には「閉塞状態にある韓日関係の転換点になるのでは」と期待を示すものもある。

 外交は国の専管事項である。舛添知事は“政治色”を薄め、会談に臨む理由の一つとして、304人の死者・行方不明者を出した客船「セウォル号」沈没事故に関して「都民の代表として韓国全体に弔意を表したい」ことを挙げ、朴大統領が面会を受け入れやすい状況を整えた。

 朴大統領と会う前には、ソウル市の朴元淳市長と会談し、微小粒子状物質「PM2・5」対策などで協力することで合意した。朴市長は日韓関係について「勇気を持って過去を顧みながら、同時に未来をともに培っていくべきだ」と強調し、舛添知事は「互いが心を開いて信頼関係を築いていけば問題は解決できる」と応じた。

 だが、対韓外交は前途多難だ。最大の障害はいわゆる従軍慰安婦問題だ。この問題への旧日本軍の関与を認めて謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話については、有識者5人による検証が行われ、報告書の中で「日韓両政府が表現を調整した」などと結論付けた。当然、韓国側は反発した。

 舛添知事との会談でも、朴大統領は慰安婦問題への強いこだわりを示した。この問題が進展しない限り、日韓首脳会談はあり得ないという立場だ。国内世論をにらんだものであろう。

 もっとも、朴大統領は日本への配慮を示さざるを得ない事情もある。今月上旬のソウルでの中韓首脳会談では、歴史問題をめぐる「対日共闘」を迫る中国の習近平国家主席に押し切られる形で足並みをそろえた。日米韓の連携を危うくする韓国の中国傾斜に、日本だけでなく米国も神経をとがらせている。

 また、韓国の反日姿勢に対する反発で訪韓する日本人観光客は激減している。会談に応じたのは、これ以上の日本人の対韓感情悪化を避ける狙いもある。

 両国は運命共同体だ

 安倍首相は先日、訪日した韓国メディア幹部らに「お互いに会って話し合ってうまくいく問題もある。だから会わなければならない」と日韓首脳会談に意欲を示した。会談の実現には官民一体となった地道な努力を要する。安全保障や経済の面で、日韓は運命共同体だ。対立点をも含めて、両国首脳がとにもかくにも話し合わない限り、何の進展も望めないではないか。

(7月26日付社説)