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時代の変化に応じたODA活用を


 政府開発援助(ODA)の基本理念を示す「ODA大綱」改定に関する外務省の有識者懇談会(座長・薬師寺泰蔵慶応大名誉教授)が、岸田文雄外相に報告書を提出した。

 報告書は、現行制度ではODA対象から除外している軍隊の活動への援助について「民生目的、災害救助など非軍事目的の支援であれば一律に排除すべきではない」として、内容や影響を考慮しつつ実施を検討するよう求めている。

「軍事的用途回避」を緩和

 「軍事的用途への使用回避」の原則緩和は、安倍晋三首相が掲げる積極的平和主義を反映させたものだ。ODA支出先の3割を占める東南アジア各国を支援し、強引な海洋進出を続ける中国を牽制(けんせい)する狙いがある。

 ODA大綱は1992年に初めて策定され、効率性や透明性を高める観点から2003年に改定された。外務省は近く新大綱案の作成に着手し、年内の閣議決定を目指す。報告書は新大綱の基本理念を「国際社会の平和、安定、繁栄の確保に積極的に貢献する」とするよう提案。中国などを念頭に、重点課題として「民主化」や「法の支配の確保」の明記も求めた。

 現在はODAを通じて支援国の軍隊に武器ではない物資を送ったり、軍人に救援など軍事と関係のない技術指導をしたりすることも禁じられている。報告書は「軍隊の非戦闘分野での活動も広がっている」として、災害救助や遺棄された地雷撤去など、軍事目的でない分野であれば支援を認めた。

 フィリピンなどは中国に対抗するため、海上警察力を強化している。だが、拠点となる港湾や空港は離島や過疎地にあることも多く、民間の投資は回りづらい。軍隊への援助が認められれば、軍民共用の港湾を整備することもできるようになる。

 日本はフィリピンやベトナムに、ODAで巡視船を供与することを決めている。しかし、このためにベトナムは軍所属だった海上警察を独立させなければならなかった。報告書にあるように、ODAに求められる役割は変化しており、大綱の見直しは不可欠だと言える。

 報告書は、国民所得が一定水準に達し、ODAの供与対象から外れた「卒業国」にも別の形で支援を継続、または再開し、関係強化を図るよう提言。経済成長を果たしても所得格差などの課題を抱える場合があり、こうした国のニーズに応えることは「外交政策上も有意義」と指摘した。

 またODAの2・5倍の民間資金が途上国に流れている現状を踏まえ、民間との連携強化の必要性にも触れている。ODAによるインフラ整備を、民間企業の投資のきっかけとし、対象国の成長を導くことが肝要だ。それは日本自身の成長にもつながろう。

予算規模拡大の検討も

 政府のODA予算は、ピーク時の97年度に1兆1687億円を計上したが、財政悪化の影響で減少傾向となり、14年度は5502億円だ。

 報告書はODAの在り方について「戦略性を高める必要がある」と強調した。予算規模の拡大も検討すべきだ。

(7月1日付社説)