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電力自由化、原発稼働で供給安定化が先決


 大手電力会社が地域ごとに独占している電力の小売り事業を2016年をめどに全面自由化する内容の改正電気事業法が先の通常国会で成立した。

 自由化によって利用者の利便性向上が期待されるが、現状では電力の安定供給への不安が先立つ。その懸念を払拭(ふっしょく)するような政府、事業者の今後の取り組みが重要だ。

高料金への可能性も

 全面自由化になれば、現在大手電力が独占する7兆5000億円規模(顧客数8420万件)の小売市場が新たに開放される。異業種からの新規参入や、地域の垣根を越えた大手電力の事業が展開しそうだ。家庭や商店も料金水準やサービス内容を見比べて、契約する電力会社を切り替えることができるようになる。

 電力の自由化は約20年前から、いわゆる市場原理の追求を標榜(ひょうぼう)し欧米などで進められた。日本でも00年に大型工場などへの供給が自由化され、その後、段階的に対象範囲が広げられてきた。サービス競争により料金が下がることが見込まれる。

 ところが今、総発電量の3割以上を担ってきた原子力発電が全て停止。原子力の発電コストは1㌔㍗/時につき8・9円程度だが、天然ガスを使った火力発電は10・7円程度、石炭を使った火力発電は9・5円程度だ。このまま推移すると単純に電力料金に転嫁して約2割アップになる。

 また原子力発電は火力発電に比べて発電コストに占める燃料費の割合が小さいため、燃料価格の変動による影響を受けにくいという特徴も無視できない。火力発電への依存度が高まるとそれだけ価格変動が起こりやすくなる。

 原発停止によって火力発電用の燃料費の増加に歯止めがかからず、燃料調達のための交渉力が低減している。この悪循環が続くことも予想される。

 現在、電気料金は人件費や燃料費など費用の全てをあらかじめ算出し、一定の利益を上乗せする「総括原価方式」で決められている。電気事業法の改正により、同方式は自由化後に競争が進んだ段階で撤廃される方向だが、むしろ料金上昇が懸念される。実際、米国でも自由化を進めた地域では、高い料金のままだ。

 一方、価格競争が激烈になると、電力会社はコストアップを避けるため、十分な設備や人材の確保という点について見通しを持った経営ができなくなる可能性が高い。電気・ガス・水道などライフラインについては安定供給が不可欠であることを考えれば、ゆゆしき事態となる。

 原発再稼働の遅れで電力需給が逼迫(ひっぱく)している中、これまで国策として推進してきた原発事業の位置付けを明確にせず、電力自由化を推進することには大いに不安がある。一日も早い再稼働を望みたい。

「自然頼み」では不安

 風力や太陽光発電など自然エネルギーは、将来のエネルギー源として開発を進める必要がある。しかし、自然現象を頼りにした発電は安定供給の面で不安が残る。電力自由化の実施の前に、エネルギー政策の確固たる方向付けが必要だ。

(6月29日付社説)