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医療・介護法が成立、「地域の力」強化のため支援を


 在宅で医療と介護のサービスが受けられる環境を整備するための医療・介護総合推進法が成立した。

 サービスの充実のためには、ボランティアなど地域住民の協力が欠かせない。政府には「地域の力」を強化するための支援が求められる。

介護保険の自己負担増

 同法には、両サービスの連携や、在宅医療の充実に取り組む医療機関を支援する基金を都道府県に設置することが盛り込まれた。都道府県は域内の病床の必要量などを示す「地域医療構想」を策定し、病院関係者も交えた協議会で各病院の役割を決める。

 病院のベッドは全国に約90万床あるが、症状が重い人向けの急性期用が約7割を占める。しかし、状態が安定した患者まで急性期病院に入院し、医療費が膨らんでいる。こうした現状を改め、在宅医療・介護サービスを手厚くすることを図る。

 一方、介護分野では2015年8月から年金収入280万円以上の人の介護保険の自己負担を現行の1割から2割に引き上げる。

 今年度10兆円の介護費用は、団塊の世代が75歳以上になる25年度には21兆円となる。財源となる保険料も、現在の1人当たり月約5000円(全国平均)が、25年度には8200円程度となる見通しだ。増え続ける費用を抑制するため、負担増はやむを得ない面があろう。

 しかし、残された課題は少なくない。国の事業として全国一律の基準で提供している訪問介護と通所介護のサービスは、市町村の事業にして中身の判断を委ねることになった。

 担い手にNPOやボランティアを活用して効率化を図るよう求め、費用の増加に歯止めをかけることが狙いだが、受けられるサービスに地域格差が生じることを懸念する声もある。サービスの質や量が低下すれば症状の悪化を招きかねない。政府は市町村への支援の在り方を明確に示すべきだ。

 特別養護老人ホームについても、新規入所は原則要介護3以上の中・重度者に限られるようになる。しかし、要介護2以下でも独居や生活困窮などの事情を抱えた待機者は多い。政府は虐待の恐れがある場合など「やむを得ない事情」があれば入所できるとしているが、低所得者が「介護難民」とならないようにする必要がある。

 安倍晋三首相は国会での答弁で「高齢化が進む中、社会保障の財政基盤の安定性を考えたときに、自助の精神がなければ維持できないのは当然。社会保障制度を次の世代に引き渡したい」と訴えた。介護保険制度を持続的なものとするためには、これからも一層の改革が求められよう。限られた財源の中で、いかに充実したサービスを提供するかが問われてくる。

住民の絆強化を期待

 望ましい医療や介護の在り方は、それぞれの地域によって違うだろう。地域の実情に合った高齢者への支援が必要だ。

 在宅医療・介護サービスの充実に向けた取り組みが住民の絆を強め、住み慣れた地域で充実した生活を送れる高齢者が増えることを期待したい。

(6月21日付社説)