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【社説】中国主席告発ト ルコのウイグル人と連帯を


10日、イスタンブールの事務所で取材に応じるギュルデン・ソンメズ弁護士(時事)

 中国・新疆ウイグル自治区での中国当局の抑圧から逃れた少数民族のウイグル人が最も多く暮らしているトルコで、19人のウイグル人が習近平国家主席はじめ中国共産党幹部や治安当局者112人を「民族虐殺に関与した」などとして、トルコ検察に刑事告発した。

 提出された証拠に基づく正当な司法判断を望むとともに、中国は少数民族に対する人権弾圧を伴う同化政策を即時撤回すべきだ。

 自治区の親戚と音信不通

 トルコのウイグル人らがトルコのイスタンブール検察庁前でデモンストレーションを行い、習氏ら中国当局者を同検察に告発したのは、北京冬季五輪が開幕するちょうど1カ月前の4日のことだ。平和の祭典である五輪・パラリンピック大会が中国で開催されることに強い異議を表明した。

 中国が過酷な弾圧をウイグル人に行うのは、トルコと同じチュルク系民族であるウイグル人の「東トルキスタン独立運動」に対する警戒感が強いためだ。強制収容されたウイグル人は100万~300万人と推定され、中国当局者を告発した弁護士チームは、何ら法律に違反したことのない一般人がウイグル人というだけで収容されている点を強調した。

 トルコには抑圧を逃れたウイグル人が数万人おり、強制収容施設を脱走した人や中国に残した家族、親戚と音信不通になっている人、自身の人権侵害の体験を持つ人々も存在する。被害者のウイグル人にはトルコ国籍を持つ人もおり、弁護士らは告発された中国当局者に普遍的管轄権が行使されるかが焦点になると主張した。

 「職業訓練」を建前とした収容施設内での拷問、暴力、強姦(ごうかん)、不妊手術についての多くの証言と画像や動画など証拠類を含む700㌻に及ぶ書類を検察に提出したギュルデン・ソンメズ弁護士は、子供を含む116人の犠牲者や最近の脱出者の医学的な性被害の証拠も含まれていることを明らかにしている。

 これまで新疆ウイグル自治区のウイグル人の強制収容など中国による人権侵害は国際的な批判を浴びている。米国は「ジェノサイド(民族虐殺)」と認定して中国に制裁を科し、欧州連合(EU)、英国、カナダなども同様に非難して対中制裁に踏み切っている。

 さらに北京五輪の「外交ボイコット」を表明した米国、カナダ、英国、オーストラリアなどと同様にわが国も政府関係者の派遣を見送ったが、なおも中国側がウイグル人はじめ少数民族への人権侵害を否定しているのは問題だ。

容認できない人権侵害

 これまでもトルコ国内では、野党や地方首長らからウイグル人を弾圧する中国に対して批判の声が上がったが、エルドアン政権は中国との外交的対立を避けようと腐心している。トルコの検察庁が告発を受理し、調査の開始と刑事告訴に踏み切るかは、国家主権の問題もあり予断を許さない。

 しかし、深刻な人権侵害は容認できないものであり、トルコのウイグル人との連帯を国際的に広げていくべきだ。