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【社説】終戦宣言協議 韓国の前のめりが気掛かりだ


韓国が朝鮮戦争(1950~53年)の終戦宣言を実現させようと活発な外交を展開している。休戦状態を終息させ、平和と安全を定着させようという趣旨は大歓迎だが、果たして北朝鮮にその意思があるだろうか。仮に宣言に応じたとしても、その裏で軍備増強の手は緩めないのではないか。北朝鮮の平和ショーに騙(だま)されてきた過去の失敗を繰り返してはなるまい。

目的はレガシー作り

 文在寅大統領は先月、国連総会で演説し、韓国、北朝鮮、米国の3カ国か、これに中国を加えた4カ国が集まり、終戦宣言をするよう提案した。

国連総会で演説する文在寅大統領=9月21日(UPI)

 これに対し金正恩朝鮮労働党総書記の妹、与正党副部長は「興味深い提案で良い発想」としながらも時期尚早との見解を示したが、翌日には前提条件付きで終戦宣言や韓国との首脳会談を行う可能性に言及した。

 こうした北朝鮮の反応を肯定的に評価したのか、韓国は鄭義溶外相がブリンケン米国務長官に文氏が唱える終戦宣言について説明。その後も米国との高官協議で終戦宣言をめぐり「深く協議」したという。

 このところ北朝鮮は各種ミサイルの試験発射に余念がない。年初めの第8回党大会で予告していた数々の新型兵器を発射したもので、核・ミサイル開発路線は一貫している。直接の脅威を受けるのは韓国や日本だ。このような情勢の中、韓国が終戦宣言を実現させようと前のめりになることには違和感を抱かざるを得ない。

 文氏はなぜ終戦宣言を急ごうとするのか。残り任期が半年余りとなった中、自身のレガシー(政治的遺産)づくりのため、たとえ北朝鮮の真意が別のところにあっても終戦宣言にこぎ着けようとしているのではないか。

 来年2月の北京冬季五輪を契機に北朝鮮が再び融和路線に転じるとの見方も出始めている。終戦宣言や南北首脳会談が実現すれば、翌月の韓国大統領選挙で北朝鮮に融和的な革新系候補の当選に有利になるとの計算も働いているのではないか。

 そもそも終戦宣言自体は政治的な宣言にすぎない。平和条約(平和協定)とは異なり、法的拘束力を伴わないことに留意すべきだ。北朝鮮を非核化に向かわせるどころか、韓国の軍備増強や米韓合同軍事演習は終戦宣言違反だと北朝鮮に抗議されれば、反論しにくくなる。韓国が終戦ムードに浸っている間、北朝鮮は密(ひそ)かにさらなる核・ミサイル開発に走る恐れもある。

 バイデン米政権も韓国の提案に安易に応じるべきではなかろう。北朝鮮に無条件の対話を呼び掛けるのは妥当としても、実際の対話では北朝鮮の真意を見極めることが不可欠だ。トランプ前政権が正恩氏と3度の首脳会談を行いながら、非核化を一歩も前進させられなかった失敗を教訓としなければならない。

融和姿勢で北を助長

 韓国は北朝鮮を対話の場に引き出すには制裁緩和を含むインセンティブを与えるべきだと主張している。北朝鮮がこれほど武力挑発を繰り返しても、制裁の維持・強化ではなく緩和をすべきだという。韓国の融和姿勢こそが北朝鮮を助長してきた原因でもある。