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中国軍機侵犯  台湾統一の威嚇は極めて危険


台湾が設定する防空識別圏(ADIZ)への中国軍機の侵入が急増している。今月に入って1日の侵入数で過去最多を相次いで更新し、4日には戦闘機や爆撃機など延べ56機、同日までの4日間だけで延べ149機に上った。中国軍機は、日中だけでなく夜間も侵入するなど攻撃態勢を示威して軍事的圧力を強めている。断じて許されない行動である。

東沙諸島付近の上空往復

中国軍の爆撃機「轟6」(上)と台湾軍の戦闘機F16=台湾上空、2月10日に台湾国防部が公表(AFP時事)

中国軍の爆撃機「轟6」(上)と台湾軍の戦闘機F16=台湾上空、2月10日に台湾国防部が公表(AFP時事)

 戦闘機「殲16(J16)」や「スホイ30」、爆撃機「轟6(H6)」、対潜哨戒機「運8(Y8)」、早期警戒機「空警500(KJ500)」が台湾の南西約460㌔に位置する東沙諸島近くの上空を往復してADIZ侵入を繰り返している。

 東沙諸島は台湾が実効支配しているが、中国はこれまでも大量の漁船団で近くを囲むなどの威嚇行動を取った経緯がある。今回の軍用機のADIZ侵入の形跡を見ても標的にされている可能性が高い。

 中国は戦闘機、爆撃機などの増産配備を台湾海峡を挟んで誇示し、夜間訓練も行うことで航空技術の技量を台湾と米国に見せつけ、昼夜を問わずに軍事的緊張を高めている。これが単なる脅しでないことは、中国共産党創立100年の記念式典で習近平国家主席が「香港での全面的な管轄権を持ち、台湾独立の企てを断固粉砕しなければならない」と述べ、台湾統一は「歴史的任務」と強調していることからも分かる。

 既に香港で中国は武断政治的な強権統治を強めた。国家安全維持法で政治弾圧を行い、選挙制度も変更し、民主派排除を徹底している。これを「全面的な管轄権」と称した“成功モデル”にして台湾統一の動きに出てきた中国・習指導体制は、非常に危険である。

 台湾ADIZへの中国軍機侵入が増えたのは、昨秋に習氏が中央軍事委員会訓練会議で「戦争準備への集中」を訴え、許其亮・中央軍事委副主席も「能動的な戦争立案への態勢転換」を唱えるなどの強硬発言を受けてからだ。今年3月には米インド太平洋軍のデービッドソン司令官(当時)が、米上院軍事委員会で「中国は6年以内に台湾に侵攻する可能性がある」と証言した。中国はその意図も能力も示しており、その一つが急増中の軍用機ADIZ侵入だ。

 特に習氏が「独立の企てを断固粉砕する」と演説したことから、台湾が国家として建国記念を祝う10月10日の双十節や、国家並みの地域として環太平洋連携協定(TPP)加盟申請を行ったことなどをはじめ、事あるごとに中国は軍事攻撃の威嚇を強めるだろう。

防衛協力を深化せよ

 わが国では岸田文雄内閣が発足し、首相とバイデン米大統領との電話会談で、日米同盟の重要性と「自由で開かれたインド太平洋」構想に向けた協力などが確認された。だが、中国軍機の台湾ADIZ侵入に対して、松野博一官房長官は「当事者間の平和的な解決を期待する」と述べるにとどまっている。日中外交関係の原則はあるが、台湾有事は日本有事に繋(つな)がるとの危機感を共有して、日米、米台の防衛協力を深化すべきだ。