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改憲論議 危機感持って具体的道筋示せ


事実上の次期首相選びとなる自民党総裁選では、4人の候補がさまざまな政策課題について議論を交わしているが、憲法改正も重要テーマの一つだ。憲法は国家の基本法で「国のかたち」を示すものでもある。施行から70年以上を経た現行憲法の不備を是正することは喫緊の課題だ。

 

アフガン人退避失敗、自衛隊派遣の出遅れ響く

アフガニスタンの邦人らを国外退避させるため、自衛隊員に見送られて出発する航空自衛隊のC130輸送機=8月24日、埼玉県の航空自衛隊入間基地

改憲4項目まとめた自民

自民党は2018年3月、9条への自衛隊明記、緊急事態条項創設、参院選挙区の合区解消、教育充実の改憲4項目をまとめた。だが先の通常国会では、利便性を高める改正国民投票法こそ成立したものの、憲法審査会では野党の抵抗もあって改憲に向けた論議は停滞している。

 しかし、改憲の必要性は増している。新型コロナウイルス対策では、緊急事態宣言を発令しても強制力がないことが問題視された。感染症だけでなく、戦争や大規模災害などの際の私権制限は、憲法に緊急事態条項を創設しないと必要な法整備を行うことはできないだろう。

 9条改正も大きな課題だ。覇権主義的な海洋進出を強める中国や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威が高まる一方、日本の同盟国である米国の国力の相対的低下は否定することができない。日本の平和と安全を守るには、9条への自衛隊明記と共に戦力の不保持や交戦権の否認を定めた9条2項の削除も求められる。

 政府は先月、アフガンの日本人に加え、大使館や国際協力機構(JICA)のアフガン人職員やその家族ら最大500人の輸送を目指して自衛隊を派遣した。だが、自衛隊法が輸送を「安全に実施することができると認めるとき」に限定しているため、大部分の人を置き去りにする結果となった。

 本来であれば、危険な状況だからこそ自衛隊が活動するのではないか。それができないのは9条の弊害だと言っていい。このままでは国民を守ることはできない。

 改憲4項目には含まれないが「家族条項」の創設も重要だ。戦後日本は個人主義が蔓延(まんえん)し、非婚化や晩婚化が進んだために少子化を招いた。国家的危機である人口減少を食い止めるには「家族の価値」を重んじるための改憲が欠かせない。

 改憲については4候補とも前向きだ。総裁選告示の際の共同記者会見では、岸田文雄前政調会長が改憲について「党総裁の任期中に実現を目指したい」と意欲を示した。高市早苗前総務相は4項目への賛意を示し、特に危機管理条項創設と9条改正を重視するとした。

 国内外の情勢が大きく変化する中、70年以上前に制定された現行憲法が一度も改正されていないことに危機感を持つ必要がある。各候補にはどのように改憲を実現するか具体的な道筋を示してほしい。

 立党の原点に立ち返れ

 自民党は改憲政党として出発した。立党時の「党の使命」では「現行憲法の自主的改正を始めとする独立体制の整備を強力に実行」するとしている。

 総裁候補だけでなく、自民党全体が出発の原点に立ち返って改憲の機運を高めていく必要がある。