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工藤会死刑判決、裁判官への脅しは言語道断


 一般市民が殺傷された四つの事件で、殺人や組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)などの罪に問われた特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)のトップ野村悟被告とナンバー2の田上不美夫被告の裁判で、福岡地裁の足立勉裁判長は全事件について関与を認定し、野村被告に死刑、田上被告に無期懲役の判決を言い渡した。
 市民を巻き込んだ冷酷な犯罪であり、判決は妥当である。

トップの共謀を認定

 起訴状によると、両被告は1998年2月、組員と共謀し、北九州市小倉北区の路上で元漁協組合長を射殺。2012~14年に福岡県警の元警部や女性看護師、男性歯科医を襲撃して重傷などを負わせたとされる。

 いずれも2人の関与を示す直接証拠はなく、実行役との共謀が認められるかが争点だった。検察側は、各事件は野村被告が意思決定して「指揮命令系統を利用して組織的に行われた」と指摘。一方、弁護側は「間接証拠から両被告の関与は推認できない」と無罪を主張してきた。

 福岡県警は14年、工藤会の壊滅に向け、最高幹部を摘発する「頂上作戦」を展開。地道に証拠を積み上げ、野村被告らを相次いで逮捕した。逮捕された組員は捜査の過程で明らかになった上層部の自己中心的な動機を知り、幹部の関与をほのめかすようになったという。

 足立裁判長は、元漁協組合長射殺について「野村被告が首謀者として犯行を指示した」として共謀を認定。残り3事件も「野村被告の指揮命令に基づき、殺害しようとした」と述べた。

 指定暴力団トップに対する死刑判決は初めてだ。だが、これまでの市民の不安を考えれば、妥当な判決だと言えよう。工藤会は組織の利益のためであれば民間人も標的とし、全国で唯一、特定危険指定暴力団に指定されている。検察側も野村被告について「極刑をもって臨まなければ社会正義を実現できない」として死刑を求刑していた。

 あきれたのは判決後の野村被告の発言だ。退廷間際に「公正な判断をお願いしたけどね、全然公正じゃない。生涯後悔するよ」と裁判長に言い放った。裁判官への脅しとも取れる暴言は言語道断である。判決に不満があれば、控訴すればいい。

 16年6月には工藤会系組幹部の裁判員裁判をめぐって、裁判員に「あんたらの顔は覚えとるけね」「よろしくね」などと声を掛け、被告に有利な審判を行うよう依頼し、威迫したとして、元工藤会系組員と会社員の男2人が裁判員法違反(請託・威迫)容疑で逮捕された。この裁判では裁判員4人が辞任。今回の4事件も裁判員裁判の対象から外された。

 脅しで裁判を捻(ね)じ曲げようとすることは決して許されない。警察は裁判関係者が報復にあうことのないよう、警戒を強化する必要がある。

元組員の就職支援を

 福岡県警は工藤会の弱体化を進める一方、脱退した構成員が組に戻らないためのサポートなどを強化する方針だ。

 民間とも協力して就職などの支援を行い、元組員の行き場を確保することが市民の安全にもつながるだろう。