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自民は集団的自衛権の党内対立を解消せよ


 安倍晋三首相は集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈変更に熱意を示しているが、自民党内の一部に異論があると伝えられる。

 自民党の安定多数確保によって時に発生する宿痾(しゅくあ)とも言うべき党内の足の引っ張り合いが始まったようだ。

 解釈改憲でなく“是正”

 先の自民党総務会では「選挙で信任されれば、時の政権は憲法解釈を変更できるのか」「解釈の変更ばかりすれば、憲法改正の必要がなくなってしまう」との見解が表明された。政府・与党の政策決定権を持つ総務会での有力議員の発言だけに看過できない。

 とは言え、発言の内容は取るに足らないものである。集団的自衛権に関する憲法解釈がいかに法理と国際常識に反するか、北東アジア情勢が緊迫化する中で防衛上の大きな足かせになっていることを認識しない議論だからだ。しかし解釈変更に反対する一部野党や勢力にとって、こうした発言は格好の反撃材料となろう。

 憲法には、国家の個性とも言うべき国柄に関する規定と、国政運営の基本規定がある。後者は内外情勢の変化に対応して適宜、変更することが不可欠だ。だが、日本の現行憲法は施行されてから六十数年の間、一度も改正されたことがない。世界の中でも珍しいほど硬直性の強い憲法である。

 このため、規定の柔軟な解釈が求められる。憲法は国家の存在を大前提としたものだ。その上、諸権利や自由も国家によって保障されるものである。国家の存立よりも“憲法擁護”を優先させるのは矛盾していると言わざるを得ない。

 もっとも、現在焦点となっている集団的自衛権の解釈変更は、間違いを正す“是正”と言うべきものであって、解釈改憲ではない。現在のような国際社会と異なった解釈を墨守していれば、国家の安全保障に支障を来す恐れがある。

 解釈変更の繰り返しで改憲の必要性がなくなるとの指摘も、的外れである。前述の国家運営に関する規定だけでなく、長い歴史を有する日本の国柄についても不適切なものが多過ぎる。その上、国際貢献、環境問題など新たな規定の盛り込みも必要になっている。

 かつての自民党は選挙で大勝すれば、派閥次元の権力闘争が活発化した。そこでは党是である自主憲法制定が忘れられただけでなく、改憲を政策課題として掲げること自体が党内対抗勢力の攻撃材料として利用されてきた。逆に、辛うじて政権を維持できる議席を確保した時は、左翼勢力の非難を恐れて戦後政治の見直しを怠った。

 国家存立に関わる課題だ

 遺憾ながら最近、またぞろ党内での足の引っ張り合いが目立ってきた。安倍首相は政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が4月にまとめる提言を踏まえ、今国会中に集団的自衛権の解釈変更を閣議決定することを目指している。

 党内で政策に関する意見が対立することはあろう。しかし、国家の存立に関わる重要な課題で争うのは避けるべきである。

(2月18日付社説)