世界日報 Web版

国勢調査 少子化抑制へ大胆な施策を


 総務省が発表した2020年国勢調査の速報値によると、日本の総人口は1億2622万6568人で、15年の前回調査から5年間で約86万人の減少となった。少子高齢化、東京一極集中も顕著だ。この勢いを止めるには、新型コロナウイルスの感染収束後を見据えた大胆な青写真を描く必要がある。

 東京一極集中が進行

 調査開始以来初の人口減となった前回と比べ、減少率は0・8%から0・7%に縮小したが、これは外国人の増加や新型コロナの感染拡大で海外から帰国した邦人が増えたことなどが背景にある。今後、新型コロナの影響で出生率が低下する可能性があり、見通しは厳しい。

 都道府県別では、一番多い東京が1406万人、次いで神奈川が924万人、大阪884万人などとなっている。上位8都道府県で全国の5割超を占めた。一方、38道府県で人口が減少するなど東京への一極集中と地方の過疎化の進行を改めて示す形となった。

 厚生労働省公表の20年人口動態統計によれば、出生数は約84万8000人と5年連続で過去最少。合計特殊出生率も1・34にとどまった。コロナ禍で産み控えする人があったことも出生数減少に拍車を掛けたようだ。

 先の通常国会で男性の育児参加を促す改正育児・介護休業法が成立したものの、少子化の抑制効果はあまり期待できない。政府は子育て施策の指令塔となる「こども庁」創設を急いでいるが、縦割りの行政を一本にまとめるくらいでは少子高齢化の流れを変えることはできまい。

 少子化の背景には、個人主義の傾向を称揚する一方で家族や国家の価値を低くしてきた戦後日本社会の価値観の変化や、東京圏などへの人口集中という構造的問題、雇用環境の変化が子育て世代に結婚や子育てへの不安を抱かせることなどがある。

 こども庁構想を含め、政府が打ち出す対策は対症療法的で体系性と力強さに欠ける。少子化に拍車を掛けている東京一極集中の是正には、首都機能の分散が一番効果的だ。首都直下地震など緊急事態に備える上でも真剣に検討すべき課題だが、一極集中からの脱却を呼び掛けるだけでは国民は動かない。

 コロナの蔓延で都市部の感染リスクに関心が集まり、テレワークが奨励されている。政府は大胆な青写真を提示し、地方への人口移動を強く牽引しなければならない。コロナという禍を転じて福となすべきである。

 1972年に田中角栄は、人とカネとモノの流れを巨大都市から地方に逆流させるために『日本列島改造論』を打ち出し、首相となってその構想を推進した。その評価は分かれるが、今の日本に必要なのはこのような大胆な青写真である。

 21世紀の列島改造構想を

 もちろん、社会の情報化やソフト化が進展した現在と当時の状況は大きく異なる。新幹線の整備などで地方と首都圏ははるかに近くなる一方、子育てに適した環境など地方の良さが見直されている。地方が再び輝きを取り戻す可能性は無限にある。コロナ後を見据えた21世紀版の列島改造構想を描くことが早急に求められている。