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米露首脳会談、中国加えた核軍縮の枠組みを


 米国のバイデン政権が発足してから初となる米露首脳会談が行われ、核軍縮やサイバー犯罪に対処する新たな枠組みの構築を目指すなど戦略的安定に向けた2国間対話を近く開始することで合意した。

 ロシアによるウクライナ南部のクリミア併合以来、悪化の一途をたどった両国関係の一時的な緊張緩和が模索されるものの、ロシア側に野党指導者逮捕など後退する民主化を再生する姿勢がないのは遺憾である。

 相次ぐ露のサイバー攻撃

 バイデン政権の対露外交の目的は「予測可能な関係」を目指すことにあるが、今回の会談でバイデン大統領とプーチン大統領との首脳同士の信頼関係が醸成されたことは一歩前進だった。両国は2月に期限を迎えた新戦略兵器削減条約(新START)を5年間延長しており、今後の実務者協議で5年後の新たな核軍縮の枠組みが話し合われる見込みだ。

 新STARTでは戦略核弾頭の配備数を米露とも1550発以下に削減することが定められているが、首脳会談の共同声明で確認された「核戦争の脅威軽減」のため、戦略対話では引き続き配備する核弾頭数の制限が焦点になるとみられる。

 ただ、「核戦争の脅威」は冷戦期の米国と旧ソ連のような両国間だけの課題にとどまらず、今日では核軍拡を継続している中国の覇権主義的な脅威が増しており、米露対話は中国に対する軍縮へのアプローチを伴う必要性に迫られよう。

 既に米露は昨年6月の新START延長交渉に中国を招待している。しかし、中国はこれをはねつけた。近く米露で行われる新たな核軍縮の話し合いでも、中国への呼び掛けもあり得よう。これにも中国が応じないとなれば、中国の軍拡に対する懸念を共有する国際社会の一員にロシアが加わる働きを米露対話が果たすことが望ましい。

 またロシアからのサイバー攻撃は、米大統領選挙への介入、ハッカー集団による米国最大級の石油パイプラインの操業停止など深刻な問題を引き起こした。バイデン氏は電気、水道など16種類のインフラを示してサイバー攻撃をやめるように要求したが、攻撃が止(や)まない場合の反撃にも言及した。

 サイバー攻撃は放置すれば報復がエスカレートするだけに、サイバー戦争となって「予期せぬ紛争」にまで発展するリスクがあると言える。プーチン氏はロシア政府の関与を否定したが、このリスク回避に向け犯罪として取り締まる責任がある。

 一方、米露関係を冷戦以来最悪にまでしたクリミア併合問題、人権問題では対露経済制裁を招いており、依然、大きな隔たりを印象付けた。野党指導者のナワリヌイ氏の暗殺未遂や逮捕への批判について、プーチン氏は受け付けなかったという。

 民主化を後退させるな

 ロシアでは、プーチン氏の大統領在任期間を延ばす憲法改正をする一方、ナワリヌイ氏らの野党を「過激派」に指定して立候補を禁じた。ソ連からの体制移行以来の民主化の動きが反転して、後退に歯止めがかからないことは由々しい問題で、引き続き改善を促すべきだ。