世界日報 Web版

東日本大震災10年 創造的復興を本格化させよう


 2万2000人以上の命を奪い、日本と世界を震撼(しんかん)させた東日本大震災から10年を迎えた。犠牲者の冥福を祈り、被災者の喪失と悲しみ、苦闘の日々に思いを馳(は)せながら、東北復興と日本再生がどれだけ達成されたのか虚心に見詰め直したい。

 集団移転で新しい街も

 東京電力福島第1原発の事故の被災者を中心に全国で今なお4万1000人以上が避難生活を続けているが、岩手、宮城、福島3県などで計画された災害公営住宅や住宅用地は全て完成し、プレハブ仮設住宅の入居者は24人にまで減った。公共施設の整備や集団移転が進み、新しい街が形作られている。インフラ面でも鉄道路線と道路がほぼ復旧した。

 甚大な津波被害を受けた三陸の沿岸部では、巨大な防潮堤が築かれ、港湾、漁港、水産加工施設が再建され、水産業も数字上はほぼ震災前の水準に回復している。瓦礫(がれき)の撤去から始まった復興の歩みは早急な生活の再建を主眼に置くもので、政府の復興会議の提言に沿い、多くは公共投資によって支えられた。

 復興会議は「東北復興と日本再生を同時に進める」と打ち出した。この方針は、復興推進会議・原子力災害対策本部会議の合同会合で「『福島の復興なくして東北の復興なし、東北の復興なくして日本の再生なし』という決意の下に」と菅義偉首相が確認している。

 これを単なるスローガンに終わらせてはならない。すなわち、東北復興に日本再生のモデルケースを期待するということである。原状復帰ではなく、日本再生のヒントとなる創造的な復興でなければならない。

 例えば少子高齢化、東京への一極集中が進む中での地方消滅の危機を日本全体が抱える中、東北の被災地はより深刻な形で直面することになった。これを克服することができれば、貴重なモデルケースとなるはずだ。

 政府は今後の5年間を「第2期復興・創生期間」と位置付け、原発事故の影響が続く福島県の復興などに取り組む。それと同時に、震災直後、官民から出された提言や盛んな議論がどう生かされたのかなどを含め、この10年の復興を検証し、日本再生につながる創造的な復興を3県で進めていくべきである。

 東日本大震災では日本の国家機能の重大な欠陥が明らかとなった。その第一は、危機対処能力の不足だ。有事や大規模自然災害の発生時、私権の制限を可能にする緊急事態条項が憲法にないため、瓦礫の撤去すら迅速に進められなかった。この条項を含む憲法改正が、国民の生命・財産を守るための喫緊の課題であるにもかかわらず、政治家たちは政争に明け暮れ、議論の進展すらない。

 首都機能移転が必要

 政治の怠慢はそれだけではない。東日本大震災でより切実な課題となった首都機能移転の議論も進んでいない。

 東京一極集中がもたらす人口減、さらには新型コロナウイルスの感染拡大で明らかとなった感染症リスクの高さなどから、移転の必要性は増している。これだけの犠牲を払った震災の警告・教訓を無駄にすることは許されない。