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ワクチン開発 パンデミックに痛い輸入頼み


 新型コロナウイルスのワクチン接種が医療従事者から先行して始まり、政府は次に65歳以上の高齢者の優先接種を4月から進める予定だ。だが、感染拡大が世界的流行(パンデミック)となった中で外国から輸入するワクチンの供給不足に直面している。ワクチン買い付けの一方で、わが国独自のワクチン開発力を高めて感染症に対処する能力を備えるべきだ。

 調達が遅れる可能性も

 政府は、既に承認し接種を開始している米ファイザー、独ビオンテック社製ワクチンを、医療従事者に対して5月前半までに480万人分、高齢者には6月末までに3600万人分を供給するスケジュールを立てている。さらに、承認申請されている英アストラゼネカ社製は6000万人分、米モデルナ社製は2500万人分の契約を結び、治験を経て5月頃に承認し接種を行う方針だ。

 しかし、ワクチン不足は明らかだ。当初想定していた医療従事者は370万人だったのが100万人ほど増え、高齢者の接種も4月初めの開始予定から中旬にずれ込み、地方自治体へのワクチン配分量も少ない。このため地方では、基礎自治体の市町村や医療機関への配分に「ささやかすぎる量だ」(大野元裕埼玉県知事)と困惑するなど、医療従事者や高齢者への接種計画が遅れることに苦情がある。

 接種は高齢者の次に基礎疾患のある人・高齢者施設などの従業員、続いてその他の人という順番で進められていくが、今のところ高齢者の接種までが見通し得る状況だ。しかし海外では昨年12月から接種が開始され、イスラエルでは人口の半数以上が、英国では3割以上が1回目の接種を受けるなど進展しているのに比べ、わが国の出遅れは否めないだろう。

 また、アストラゼネカ製ワクチンについては、欧州連合(EU)が供給確保のため域内で生産されたワクチンの輸出を規制しており、実際にイタリアで生産されたワクチンのオーストラリア向け輸出を同国が差し止める事例も起きた。ワクチンを開発した海外メーカーはさまざまな国々と契約を結んでおり、供給不足からわが国の調達が遅れる可能性もある。

 これまで政府は、緊急政策パッケージ「日本創薬力強化プラン」を決定し、革新的新薬を創出するなど医薬品産業を強化するための環境整備、研究開発に予算を充ててきたが、パンデミックの緊急事態に際して重要性は増している。

 また、自民党は「創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム(PT)」の初会合で、感染症による有事に、安全保障の観点からもわが国のワクチン開発力を向上させる方針を示した。

 独自の対処能力が必要

 パンデミックの感染症対策にワクチンの海外頼みはわが国にとって痛切な問題だ。新型コロナ対応ワクチンを開発したのは、米国、英国、ドイツ、中国、ロシアの各研究機関・製薬メーカーだ。世界3位の経済大国であり先進7カ国(G7)に位置するわが国は、次のパンデミックに備え独自にワクチン、薬品開発を先行して対処できる能力を持つ必要があろう。