世界日報 Web版

「孔子廟」違憲判決、特定宗教の特権は許されぬ


 沖縄県那覇市が管理する公園の敷地を「孔子廟」として一般社団法人に無償提供したことが、憲法の政教分離原則に違反するかが争われた住民訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷が違憲と判断した。

 政教分離は信教の自由を守るための原則だ。特定の宗教が、国や自治体から特権を受けることがあってはならないのは当然である。

 最高裁「宗教性を肯定」

 孔子廟は儒教の創始者である孔子を祭る建物。2013年4月に松山公園に建てられた「久米至聖廟」について、市は社団法人久米崇聖(そうせい)会からの申請に基づいて11年に設置を許可し、土地使用料も全額免除した。これに対し、那覇市在住の女性が、市が使用料を請求しないことは政教分離原則に違反するとして提訴した。

 憲法20条は信教の自由を保障した上で「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と規定。89条は「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため」に支出してはならないと定めている。

 大法廷は、孔子廟で孔子の誕生日に行われる祭礼が、孔子の霊をあがめる儀式だとして「施設の宗教性が肯定できる」との判断に基づいて違憲判決を下した。久米崇聖会は14世紀半ばに中国から琉球に派遣された職能集団の末裔(まつえい)らで構成される団体で、一審と二審判決では宗教団体に当たると判断されている。

 政教分離の解釈に関しては、三重県津市の地鎮祭訴訟の最高裁判決がある(1977年7月)。判決では、社会事象としての広がりを持つ宗教と国家や公共団体は完全に無縁であり得ないとし、「社会通念を基準」として特定の宗教を助長したり他の宗教を圧迫したりしなければ「宗教的活動」に当たらないと判断。地鎮祭を合憲とした。

 特定の宗教と関わりのある私立学校への助成や、神社や寺院、仏像などを保存するための補助金支出が違憲とされれば、宗教に基づく差別が生じ、信教の自由を侵害することになりかねない。こうした「政教完全分離」は許されない。

 一方、2010年1月の「空知太(そらちぶと)神社訴訟」では北海道砂川市が市有地を神社に提供したことが違憲と判断された。ただ判決では、国公有地を宗教的施設に無償提供する行為について「施設の性格や無償で供されるに至った経緯、一般人の評価などを考慮し総合的に判断すべきだ」とする新たな基準も示した。

 今回の違憲判決は、こうした基準によるものだろう。湯島聖堂や足利学校など全国の孔子廟でも似たような行事が行われているが、設立経緯などを踏まえ、区別して考える必要がある。

 市は事態の改善を図れ

 久米至聖廟の設置を許可したのは、当時の翁長雄志市長だった。土地使用料の免除は、翁長氏が便宜を図ったとの見方もある。翁長氏は中国のシンボルである龍柱や中華街の建設も計画し、これには中国による沖縄への浸透工作を懸念する意見もあった。那覇市は今回の判決を重く受け止め、事態の改善を図るべきだ。