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工匠の技、後継者育て後世に伝えよう


 長い歴史の中で継承されてきた「工匠の技」の普遍的な価値が認められた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が、日本の「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」を無形文化遺産に登録することを決めた。われわれ日本人がその価値を再認識し、後継者育成の弾みにしたい。

 自然素材で豊かな建築

 日本の無形文化遺産は、2008年の「能楽」「歌舞伎」「人形浄瑠璃」を皮切りに「和食」「和紙」などが登録され、今回は18年の「来訪神 仮面・仮装の神々」以来、22件目となる。

 登録された「工匠の技」は、伝統的木造建築を支える17件(14団体)。「檜皮葺・柿葺」「茅葺」や、茅葺(かやぶ)きに使うススキやヨシなどを採取する「茅採取」、土壁をつくる「左官」、「畳製作」「建造物漆塗」などだ。世界文化遺産に登録されている京都や奈良の寺院はもちろん、そのほかの伝統的な日本建築の内装まで含めた全体を支える技術が対象となっている。

 日本は提案理由として、これらの技術が木や土、草など自然素材を使って豊かな建築空間を生み出し、保存修復においても建築当初の部材と取り替える新部材にできるだけ同じ素材を用い、これらを調和的に使用するなど工夫を重ねて発展してきたことを挙げた。

 ユネスコの政府間委員会は「熟練の職人が、伝統的な技能の知識を継承する後継者として、弟子たちを育成してきた」と評価。茅葺き屋根などの補修作業は地元住民も参画していることから「日本人の文化的アイデンティティーを強化する機能を持つ」と称賛した。

 1000年にわたって発展してきた匠の技であり、こうした技術がなければ世界に誇る寺院建築や合掌造りの家などは存続し得ない。ユネスコ日本政府代表部の尾池厚之大使は「日本の文化遺産を職人の技術なしに維持することはできず、有形と無形の文化遺産は密接に結び付いている」と演説した。

 陰で支えてきた分野の価値が世界に認められた。後継者不足に悩むこの分野に若い世代の関心が向くことを期待したい。

 伝統的な建造物のほとんどが石造りの欧州では、古い建物の内部を改造したりして、現在でも公共施設や住居に使っているものが少なくない。一方、日本の伝統的な建造物は寺院などが多く、一般の利用が多いとは言えない。茅葺きの民家などはどんどん減っている。このような需要の不足が、技術継承や後継者育成のネックとなっている。

 茅葺き屋根の民家の内部を部分的に改造するなど、日常生活の場にするための試みが全国各地で行われている。政府や自治体は無形遺産登録を機に、技術を残していくための方策として茅葺き民家保存の動きをもっと支援すべきである。

 意味のある復元事業

 名古屋城の本丸御殿や金沢城など城の復元は、木や壁土などを使って創建時に近い形で行われている。当然費用も掛かるため、ここまでやる必要があるのかとの意見もあったが、伝統的な技術を後世に継承するためにも、こうした復元事業は意味のあることである。