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川辺川ダム要望 ハード対策で被害を減らせ


 熊本県の蒲島郁夫知事は赤羽一嘉国土交通相に、球磨川の支流である川辺川に治水専用の「流水型」ダムを建設するよう要望した。

 地球温暖化の影響で全国的に大規模な水害が相次いでいる。被害を減らすには、ダム建設や堤防強化などハード対策が欠かせない。

 反対から容認に転じる

 川辺川ダムをめぐっては、環境保護などを理由に建設予定地の相良村や人吉市の首長らが2008年に計画の白紙撤回を要求し、蒲島氏も反対を表明。09年に当時の民主党政権が建設中止を発表した。

 その後は「ダムによらない治水」を目指し、遊水地の設置や、川辺川の水を八代海に流す放水路の建設などを検討したが、数千億円単位の事業費や数十年にわたる工期などがネックになり抜本対策が決まらなかった。こうした中、今年の7月豪雨で球磨川水系が氾濫。熊本県内の死者65人のうち、50人が球磨川流域で亡くなった。

 球磨川は県南部の山間部を縫うように流れ、日本三大急流の一つに数えられる。10月には国が「川辺川ダムがあれば人吉地区の浸水面積を約6割減らせた」とする推計を示した。蒲島氏は豪雨による人的被害に対して「重大な責任を感じている」と述べたが、ダム建設への反対は大きな誤りだったと言わざるを得ない。

 蒲島氏は赤羽国交相との会談で、治水と利水に使う多目的ダムを建設する従来の計画を廃止し、流水型ダムの建設を要請した。流水型ダムは堤体の下部に穴が開いており、洪水時には流下量が制限され、平時はダムの上流から下流に一定量の水が流れる。魚類が往来できるなど、環境への負荷が一般的なダムに比べて小さい。

 このところ18年の西日本豪雨や19年の台風19号など、毎年のように大規模な水害が発生している。7月豪雨では、積乱雲が次々に発達して列をなす「線状降水帯」が長時間かかり続け、球磨川を氾濫させて大きな被害を出した。

 蒲島氏はダム建設反対から容認に転じた理由について「被害防止の確実性が担保できるダムを選択肢から外せない」と述べている。10月からは、流域住民らを対象にした意見聴取会を計30回実施。ダム建設を求める声が上がる一方で「清流を守ってほしい」との反対意見も出た。建設に向け、住民の理解を得ていくことも求められる。

 新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ景気の下支えのために編成される20年度第3次補正予算案では、国土強靭(きょうじん)化の推進も柱となる。熊本だけでなく、日本全国で大規模な自然災害に備える必要がある。

 治水へさまざまな工夫を

 もっとも、国は7月豪雨に関して「ダムがあっても氾濫自体は防げなかった」としている。蒲島氏はダムを含めたハード対策と早期避難などソフト対策を組み合わせた「流域治水」の実現を目指すとしている。

 赤羽国交相もダムのほかに「河道掘削や堤防強化、森林保全も考えていかなければならない」と述べた。さまざまな工夫で減災に努めるべきだ。