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札幌五輪招致 どのようなレガシーを残すか


 日本オリンピック委員会(JOC)が、2030年冬季五輪招致を目指す札幌市を国内の立候補地として承認した。招致が実現すれば、1972年以来2度目の開催となる。

 72年当時は高度経済成長期で、64年の東京五輪、70年の大阪万博に続く国家的イベントだった。今回は経済発展を遂げた国として、どのようなレガシー(遺産)を残すのかが、招致を目指す上で問われる。

熱意や開催能力に高評価

 札幌市は当初、2026年五輪の招致を目指していた。しかし18年に起きた北海道地震の影響などを考慮し、30年の招致に切り替えていた。

 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長と札幌市の秋元克広市長は先月会談し、熱意や開催能力が高く評価された。ソルトレークシティー(米国)やピレネー・バルセロナ(スペイン)なども招致に意欲を示しているが、札幌市は有力候補だと言えよう。

 IOCは昨年6月、五輪招致について、複数の国や地域、都市の共催を容認し、開催地の決定時期は原則大会7年前としていたのを柔軟に選べるようにするなどルールを変更した。費用の膨張による招致への意欲低下を避けるためだが、30年冬季五輪の開催地は来年にも決まる可能性がある。札幌市は招致に向けた準備を急ぐ必要がある。

 招致実現には、市民の支持率を高めることも欠かせない。最近は地元の反対で立候補都市が撤退するケースもあり、IOCは住民投票などで市民の支持を受けているか明確化することを求めている。

 大きな援軍となるのが、20年東京五輪のマラソン、徒歩の札幌開催だ。マラソンへの応援を通じて冬季五輪招致に向けた機運が市民の間に醸成されることを期待したい。

 1972年の札幌大会は、アジアで初めて開催された冬季五輪だった。スキージャンプ70㍍級では、日本選手が金銀銅のメダルを独占して「日の丸飛行隊」と呼ばれるなど活躍した。五輪開催は、地下鉄の開通や地下街の建設など札幌市のインフラ整備に多大な貢献をしたと言われている。

 札幌市では2030年度に北海道新幹線が延伸開業する予定だ。五輪が開催されれば、これと相まって札幌を中心とする北海道の活性化につながろう。

 五輪憲章には「大会の良いレガシーを開催国と開催都市に残すことを推進する」と記されている。20年東京五輪・パラリンピックに向け、政府や都は大会施設などハード整備のほか、目に見えない「無形のレガシー」の創出も前面に出している。

 大会中の混雑を緩和するための時差出勤やテレワークなど柔軟な働き方の五輪後の定着、ボランティア文化の醸成、次世代通信規格「5G」の普及などだ。札幌市も五輪開催を目指すのであれば、レガシーを明示することが求められる。

情報発信を強化したい

 一方、札幌には東京とは違った魅力がある。五輪招致に向けて札幌や北海道についての情報発信を強化し、これまで以上に多くの外国人観光客が訪れることが願われる。