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自衛隊中東派遣、政府は過剰な命令を避けよ


 海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が、中東の海上交通路を航行する日本関係船舶の安全を守るために横須賀基地(神奈川県)を出港した。

 既に海賊に対応するためアフリカのソマリア沖に派遣している哨戒機2機と共に、同海域でのテロに対処する。国際武力紛争法で許容されているルールに従って、所期の任務を立派に果たすよう期待する。

 タンカーが攻撃受ける

 出港の際、一部の左翼団体が「憲法違反」などと称して派遣反対のデモを行った。自民党政権の行うことは全て「絶対反対」という惰性から出た行動だろう。

 中東海域は、日本が輸入している原油の90%以上を運搬するタンカーなどが通航している。既に日本のみならず英国などのタンカーも攻撃を受けており、攻撃が頻発すれば原油輸入が途絶し、日本経済のみならず国民生活も重大な打撃を被ることになる。

 ただ懸念すべきは、一部で「シビリアンコントロール」(文民統制)を誤った意味で強調する向きがあることだ。ソ連のスターリン首相、ドイツのヒトラー総統はシビリアンであるが、軍事作戦への過剰な介入によって、多くの誤りを犯している。これは独裁国家だけではない。英国のチャーチル首相も、しばしば英国を危機に陥れるような作戦を軍に求めた。

 米国の戦争指導でも、ジョンソン大統領がベトナム戦争で、執務室で地図を広げて米軍部隊の細かい作戦まで命令したことが、シビリアンコントロールの逸脱とされている。在イラン大使館人質事件でのカーター大統領の直接的な救出作戦指示も、大失敗の好例として挙げられている。

 一方、模範例はブッシュ(父)大統領の湾岸戦争への対応だ。重要な節目、節目に政治家として判断を下し、あとは軍指導者に委ねたからだ。

 諸外国の政治指導者の多くは軍歴があり、また高等教育の場でも国際政治学の重要な一部として軍事が教えられている。それでも政治家による軍事作戦への過剰な介入は好ましくないとされる。

 日本の政治指導者は、軍事についての知識は極めて乏しい。わが国の国際政治学は、ほとんど“軍事抜き”である。

 このような事情があるから、武器の使用が必要になれば「警察官職務執行法を準用する」との派遣方針が政府・防衛当局の文書に明記されるのだ。また、諸外国の船舶が攻撃されていても「任務外」として見て見ぬふりをすることになる。いずれにしろ、憲法条文の解釈を踏まえて派遣艦艇、偵察機に過剰な指示、命令を出すことは避けるべきである。

 武力行使辞さない決意を

 派遣艦艇の任務の要諦は「フォース・イン・ビーイング」。つまり艦艇の存在を示すことによって、テロリストの行動を抑止することにある。

 それには必要になれば、海戦に関する『マニュアル』、空戦・ミサイル戦に関する『マニュアル』などを踏まえて武力行使を辞さない決意と行動が不可欠である。