小学校の教科担任制導入 授業の質、児童の理解とも深まる

教育部長 太田 和宏

2022年度から小学校の高学年で「教科担任制」が順次導入されていく。これまでは学級担任(副担任がいる学校もある)が全ての教科を教える体制だったが、算数、理科、社会など、できるところから順次取り入れていくという。学級担任は残るが、専門的知識を持った教科担任が新設され、部分的ではあるが、中学校の授業に近くなる。

文部科学省が目指していることは①教科担任が専門性を発揮して児童に質の高い学びを習得させる②児童の特質を見極めるため、複数の学年担任の形を取る③中学になると教科担任制になり、子供たちが付いていけないというギャップを解消する―などだ。

従来、高学年クラスになると、担任が得意ではない教科(音楽、図工、家庭科、外国語、体育等)に専門教師を置く専科が設けられている。これに加えて社会、理科、算数の教科担任を置くというもの。

学級担任制では個々の教員の力量にばらつきがあり、児童の学習成果にもばらつきが生じかねなかった。教科担任制になれば、専門性を生かした授業準備ができるし、他の教科の準備に費やしていた時間を担当科目の準備に振り向けることができ、働き方改革にもなる。

このシステムを全国に先駆けて取り入れている東京都の江戸川区立第四葛西小学校で5、6年生にアンケートを取ったところ「専門的に話してもらえ、授業が分かりやすくなった」「いろんな教え方があって楽しい」などのメリットを挙げている。また、生活面でも「学級担任以外の先生から褒められた」とか「いろんな先生の目で見てもらっている」と複数教諭の“チーム学年”の利点を指摘する児童もいる。

だが、良いことばかりではない。現行の学級担任制で行う授業より密度の濃い学習が行えるが、教える技術、知識も向上させる必要がある。また、教員の人数を確保できる大規模校ならば可能であろうが、小規模校、地方の小さな複式学級などでは簡単にはいかない。問題が起きたとき、責任の所在がはっきりしないケースも起きる。

釼持勉・明海大学客員教授は「教科担任制を実施するには教員の質と数が絶対に必要。文部科学省は今年度概算要求で2000人増やすよう要求したが、定数950人増にとどまった。25年度までに8800人の増加が必要だ。鈴木俊一財務相は末松信介文科相との予算折衝で近隣の中学校教諭を活用すれば可能だと言い張る。小学校と中学校の教員のシステムの違いを理解していない発言」と人員増への予算裏付けが少ないことを憤る。

また、小学校教員の矜持(きょうじ)として「1年生から学級持ち上がりで卒業を見届けたいという気持ちで小学校教員を目指してきている。高学年の教科担任制が実施されると、クラス担任を持てないという教員が出てくるだろう。学年全児童が自分のクラスだという気持ちが必要。専門授業を受け持つ先生が転校した場合に後を引き継ぐ教員を育てていくことも必要だ」と教職関係者に訴えている。