中国ゼロコロナ政策の失敗 揺らぐ政治体制の優位性

記者の視点

中国外交部前に掲げられた中国=2020年4月6日(UPI)

国際情勢を分析している米調査会社「ユーラシア・グループ」は年初、「今年の10大リスク」を発表し、世界経済最大のリスクは中国が進めるゼロコロナ政策が失敗することだと指摘した。

同調査会社によると、中国は新型コロナウイルス発症の地ながら、2020年までは新型コロナウイルスの徹底封じ込めに成功していたかに見えたが、これから感染力のより強い変異株との闘いとなることで、封じ込めに失敗してより大きな感染を引き起こし深刻な都市封鎖につながるだろうとの見立てだった。その結果、中国経済の低迷とサプライチェーンの途絶など世界経済が混乱する可能性を指摘した。残念ながらその懸念は的中しつつある。

中国最大の商都上海市はこれまで感染対策の優等生とされてきたが先月28日、市内を東西区域に分け順次ロックダウン(都市封鎖)を始めた。地下鉄やバスの運行を止め自家用車も禁止、外出も原則禁止した。5日にはロックダウン延長が決定、対象を市民2500万人すべてに拡大した。

国際社会は新型ウイルスとの共存を探ってきたが、唯一中国だけは感染を徹底的に抑え込むゼロコロナ政策を取ってきた。コロナ感染が確認されると、その地域を封印してきた中国のゼロコロナ政策は当初、大きな効力を上げたのは事実だ。

だが、中国政府はそれを「政治体制の勝利」として高らかに謳(うた)い上げることで中華ナショナリズム高揚の旗を振り、強権国家を正当化した。

一方で中国は、甚大なコロナ感染被害で疲弊した欧米諸国の無策ぶりを強調した。新冷戦ともされる米中対立構造がこれに拍車を掛けた。ただ、問題は中国が「体制の勝利」とまで持ち上げたことで、自分で自らの手を縛ってしまったことだ。

オミクロン変異株は感染力が強いものの、症状は比較的軽い。そのため、中国が現在のゼロコロナ政策をそのまま続けていくべきなのか、冷静に検討すべき時に来ている。

しかし本来、科学的に取り組むべき感染症対策を「政治体制の優劣」と結び付けて論じてしまったことで、中国当局は「引くに引けなく」なってしまっている。コロナ対策での失敗は、即、政治体制の優位性の否定を意味してしまうからだ。

企業にしろ、人にしろ、激変する国際環境や周辺の基本的変化にちゃんと適応しないと、国際社会や時代に取り残されてしまい、衰退のどぶ板を踏み外してしまうことは往々にしてあるものだ。その点、一つのやり方がいつまでも正しいとは限らないことが判明したら、さっさと補正し次の手を繰り出す柔軟性がないと、中国は国家的どぶ板を踏み外すことにもなりかねない。

ロシアのウクライナ侵略の失敗は、強引なチェチェン侵攻とクリミアでの力による無血占領を果たした“成功”体験が、二度あることは三度あると安易に思い込んだ結果でもあった。

ジャーナリズムの自由が欠落したロシアや中国という強権国家は、基本的にマスコミのチェックを受けることがなく、独善に陥りやすい「体制の弱さ」が露呈する。