中国 侵攻の計算見直しか 【ウクライナ危機-識者に聞く】

米ハドソン研究所日本部副部長 ライリー・ウォルターズ氏

台湾海峡への影響

ロシアによるウクライナ侵攻が国際秩序に激震をもたらしている。この危機をどのように捉え、対応していくべきなのか。識者に聞いた。

ウクライナ危機は、台湾海峡情勢にどのような影響を及ぼすか。

ウクライナ情勢を最もよく観察しているのは、間違いなく中国だ。ロシアは何を間違え、どうすれば状況を改善できるのか、そして他の国々の反応を綿密に研究している。
台湾側も当然、自分たちの能力を高める必要性を学んでいる。中国はおそらく、台湾を侵攻するのはそう簡単ではないことを学んでいると思う。

ライリー・ウォルターズ(Riley Walters)
米シンクタンク、ヘリテージ財団上級政策アナリストなどを経て、現在、ハドソン研究所日本部副部長。グローバル台湾研究所上級客員研究員も務める。高校時代に熊本県に留学し、上智大学でも1年間学んだ知日派。

ただ、ウクライナで起きていることと、台湾で起きる可能性があることには、類似点とともに相違点も多い。欧州諸国はウクライナに武器や軍需品をほぼ毎日供給しているが、台湾で何かが起きた場合、日本や東南アジアから同様の支援を受けられるのか。これは一つの大きな疑問点だ。

ウクライナ人はロシアの侵攻に激しく抵抗し、国際社会も結束して強力な制裁を科した。中国指導部もこれを見て、台湾侵攻をめぐる計算を変えざるを得ないのでは。

間違いなく計算を変えていると思う。台湾侵攻を微積分の問題と考えるなら、中国はその問題に組み込まれた変数を変えているはずだ。国際社会からの強い反応は、中国に実に良いシグナルを送った。

ただ、欧州をはじめとする多くの国々は、ロシア経済よりも中国経済への依存度が高く、国際社会が同じような反応を示すとは限らない。私はそれを懸念している。制裁を科すことがはるかに難しくなるかもしれない。

米国の対応はウクライナとはかなり違うものになるだろう。ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)の加盟国ではない。だが、台湾については、米国に台湾関係法がある。台湾の防衛を保証するものではないものの、米国は軍事介入する可能性がある。

ウクライナ危機から日本が学ぶべき教訓は。

ドイツや東欧諸国が今、学んでいることだが、実際に侵攻されるのを待つよりも、防衛力に投資する方が賢明であるということだ。このような事態を抑止するために、米国が同盟国に求めてきたように、日本も防衛費を増やす必要がある。

ホワイトハウスで共同記者会見を行うシュルツ独首相(写真左)とバイデン米大統領=2022年2月7日(UPI)

日本は(敵基地攻撃能力として)中距離ミサイル能力を持つべきだ。ウクライナにもっと早く軍需品を提供できれば良かったと言われているように、ハードウエアや能力は今すぐ持った方がいい。

米国もすべきことがある。対艦・対空ミサイルなどの防衛力を台湾に提供することだ。そうすることで、万一の事態が起きても、台湾は台湾海峡という自然の防御壁を維持することができる。これはウクライナにはない国防メカニズムだ。

ウクライナ侵攻を招いた要因の一つは、米国や欧州諸国がロシアへのエネルギー依存を高めていたことだ。日本のエネルギー政策をどう見る。

この10年間、化石燃料への依存度を高めたことが、今回のロシアの侵攻を招いた。従って、原子力エネルギーの再稼働を真剣に検討する必要がある。

福島の記憶はまだ強く残っており、原子力が必ずしも好意的に捉えられていないことは理解している。しかし、エネルギー安全保障に懸念がある上、クリーンエネルギーへの新たな需要も生まれている。エネルギーの多様化も重要だ。太陽光や風力に頼るのは的外れである。

(聞き手=編集委員・早川俊行)