米大リーグのアメリカン・リーグ最優秀選手(MVP)に、エンゼルスからフリーエージェント(FA)となっている大谷翔平選手が、2年ぶりに選ばれた。2度目の満票での受賞はメジャー史上初の快挙だ。
投打共に著しい成長
メジャー6年目の今季は、44本塁打で日本人初の本塁打王を獲得し、打率3割4厘、95打点をマーク。投手としても10勝5敗、防御率3・14の好成績を収めた。投打の「二刀流」で、史上初めて2年連続で「2桁勝利、2桁本塁打」を達成した。
9月の練習中に右脇腹を痛め、負傷者リストに入ってシーズンを終えた。またエンゼルスは今季、ア・リーグ西地区4位に終わった。それでも全米野球記者協会の記者30人は全員、大谷選手に1位票を投じた。それほど目覚ましい活躍であった。
MVPに選出されるには、チームの勝利への貢献度の高さが問われるという。大谷選手の二刀流は、1人の選手の能力とパフォーマンスの高さを示すだけでないことが証明された。これまでの大リーグ、プロ野球の常識を打ち破り、新しいスター選手像を開拓するものといえ、大きな意義を持つものだ。
投打での成長・進化の跡は今季も著しいものがある。打撃では、苦手だった外角高めを克服、どのコースでも本塁打を打てるようになった。直球への打率も今季は4割2厘と飛躍的に向上し、剛腕投手の速球にも力負けしない打法を身に付けた。投手としては、横に大きく曲がる「スイーパー」を軸に、最速160㌔超の直球など、さまざまな球種で打者に的を絞らせない変幻自在の投球を展開した。
大リーグ専門局の番組に出演した大谷選手は「投打のバランスがすごく良く、より高いレベルでこなせた。ただ、最後まで出続けられなかったのが心残り」と今季を振り返っている。9月に受けた右肘の手術については「順調に、1回目よりもすごくスムーズにきている感覚はある。スムーズに来季に入っていけると思う」と述べている。来季は投手としての出場は断念する見通しで、二刀流を見られないのは残念だが、打撃に専念できる分、さらなる成長そして2年連続の本塁打王を期待したい。
大谷選手の試合中の態度、謙虚な姿勢などもファンの心をつかんでいる。番組で「プレー以外での自身の魅力は」と質問され、「本当に野球に集中したいのが自分のスタイル。他の部分は後から付いてくると考えていればいいと思う」と答えている。
大リーグでMVPを獲得することは、アメリカンドリームを実現したサクセスストーリーとして印象付けられる。これに対し、大谷選手の言葉には、野球少年がそのまま大人になったような純粋な情熱が感じられる。そんな姿勢も米国の野球ファンには新鮮な魅力と映るだろう。
今季以上の活躍を期待
大リーグの歴史を塗り替えていく大谷選手の活躍は、野球少年ばかりでなく、日本の若い世代に勇気を与えるものだ。FA交渉がどうなるかが今後の注目の的になるが、飽くなき向上心と所属チームへの貢献の姿勢を貫いて、来季は今季以上の活躍を期待したい。