【社説】中国ミサイル 緊張高める挑発は許されぬ

中国軍が台湾を取り囲む海空域で軍事演習を開始し、台湾周辺海域に11発の弾道ミサイルを発射した。
中国はペロシ米下院議長の台湾訪問に猛反発しているが、緊張を高める挑発は許されない。

台湾や日本の近海に発射

台湾の軍事専門家によると、中国軍による台湾周辺への弾道ミサイル発射は1996年以来26年ぶり。中国は、台湾初の直接選挙による総統選挙をめぐる95~96年の第3次台湾海峡危機でも、台湾周辺で演習やミサイル発射を行った。

中国がミサイル発射を強行した背景には、米大統領職の継承順位2位という要職である下院議長のペロシ氏が台湾を訪問したことがある。ペロシ氏の訪台は、台湾統一を目指す中国の軍事的圧力が強まる中、米台の連携強化を示したものだが、中国本土と台湾は不可分とする「一つの中国」原則を掲げる中国は「中国の主権を侵害する挑発的な行為だ」(王毅国務委員兼外相)と激しく非難した。

中国軍は台湾を取り囲む6カ所の海空域で7日正午まで演習を続ける予定。期間中は船舶や航空機が演習区域に入らないよう要求しているが、危険な挑発行為はやめるべきだ。

この海空域には台湾東側の日本の排他的経済水域(EEZ)も含まれ、台湾海峡危機で中国がミサイルを撃ち込んだ地点よりも日本に近い。中国が発射した弾道ミサイルのうち5発が日本のEEZに落下した。岸信夫防衛相は「わが国の安全保障および国民の安全に関わる重大な問題だ」と非難した。

まさに「台湾有事は日本有事」であることを示すものであり、台湾から約110㌔に位置する日本最西端の沖縄県・与那国島などでは島民の間に不安が広がっている。こうした中国の身勝手な振る舞いは断じて容認できない。

ブリンケン米国務長官は、カンボジアで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)との外相会議で「台湾の現状を変える一方的な取り組みに反対する」と語り、中国を強く非難した。また、先進7カ国(G7)外相は中国の軍事的威嚇を批判する声明を出した。これに中国が強い不満を表明したことで日中外相会談が見送りとなったが、国際社会が中国を批判するのは当然だ。

中国の習近平国家主席が武力行使も辞さない強硬姿勢で台湾統一を目指すのは、自身の権威を高めるとともに西太平洋の覇権を握る上での布石とするためだろう。中国は台湾海峡危機の際、米軍が空母を近海に派遣したことでミサイル発射の自制に追い込まれた。

中国は米空母が南シナ海や台湾周辺に接近することを阻止するため、対艦弾道ミサイル「東風26」や「東風21D」を配備。音速の5倍以上の「極超音速」や変速軌道で飛ぶミサイルの開発も進んでいる。

反撃能力の保有を急げ

中国のミサイルは、米国や台湾だけでなく日本にとっても大きな脅威である。

日本を攻撃する他国のミサイル発射拠点に打撃を与える反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を急ぐべきだ。