【社説】参院選と安保 抑止力強め戦争防ぐ政策を

米海兵隊と陸上自衛隊は離島防衛を想定した共同訓練を行った=2022年3月15日(UPI)

今回の参院選では、安全保障政策の在り方が主要な争点になっている。ロシアのウクライナ侵略や中国、北朝鮮の軍事的脅威の高まりなど国際情勢の緊迫と、それに対する国民の不安増大が背景にある。

そこで現下の国際情勢を直視し、現実的な安全保障政策を提示しているかという視点で各政党の公約を読み比べると、政策に具体性や実効性の伴わないものが目に付く。

国際情勢直視せぬ社共

野党では、共産党が日米安保条約廃棄や9条改憲反対、敵基地攻撃能力保有の否定を訴える一方、急迫不正の際には違憲の存在と位置付ける自衛隊の活用を説く。教条的な反米スローガンと弥縫策(びほうさく)の合体だと言わざるを得ない。外交での平和実現にのみ拘り、改憲、防衛費増を認めない社民党は、現実の国際情勢から目を背けて信念や理想主義に固執するばかりだ。

日本維新の会は「積極防衛能力」の整備を掲げ、防衛費の国内総生産(GDP)比2%への増額や専守防衛原則見直し、核共有の検討を打ち出している。だが、自らが目指す具体的な防衛力の姿は提示し得ていない。国民民主党は抑止力強化や自衛のための反撃力整備、防衛費増などを掲げ、原子力潜水艦保有の検討を主張するが、自民党との違いが不明瞭になっている。

一方、立憲民主党は「メリハリのある防衛予算」や「日米役割分担の下での防衛力整備」が公約。野党第1党ながら抽象的表現が目立ち、党が目指す防衛力の姿が見えない。敵基地攻撃能力保有の扱いもはっきりしない。自民党と連立を組む公明党も「専守防衛の下での防衛力の着実な強化」や「隙間の無い安保体制構築」など曖昧な対応で、防衛費増や改憲には慎重だ。政権を担う党として現状をどう変えようと考えているか明確なメッセージを出すべきだ。

政権政党である自民党は、弾道ミサイル攻撃などへの反撃能力の保有を公約に掲げる。北朝鮮や中国の脅威が増大する現実を踏まえれば、国民の生命や国土を守る上で喫緊の課題だ。それが日本の抑止力を強め、戦争防止にも役立つのである。

ただ、敵基地攻撃能力を反撃能力と呼び変えただけでは意味がない。反撃能力と専守防衛原則の関係が不明確との批判もある。反撃能力を認めることで、自衛隊の任務や機能がどう変わるのかを有権者に分かりやすく説明する必要がある。

防衛費については、北大西洋条約機構(NATO)が基準とするGDP比2%以上を念頭に増額し、5年以内に防衛力の抜本的強化に必要な水準を達成するとしている。米国の期待に応え、国際社会への責任を果たすための施策と理解できるが、新たな国防政策を検討中の段階で先に防衛費の増額目標が示されることには違和感も伴う。

理解得る十分な説明を

選挙公示直前、前年度比0・4%減額された年金が支給された。2年続けての減額だ。物価高騰の中で年金を減らされた高齢者が、防衛費大幅増の公約を素直に支持できるだろうか。

国民の理解と納得を得るための十分な説明努力が自民党に求められる。