【社説】埼玉LGBT条例 県民の意思を無視する暴走だ

埼玉県議会の最大会派の自民党議員団(埼玉自民)が、社会通念に反した内容を盛り込んだ「性の多様性に係る理解増進条例」案を議会に近く提出する方向で動いている。

一部報道では、パブリックコメント(意見公募)で反対意見が9割に上った。住民の意思を無視した条例案を提出するのは、暴走としか言いようがない。提出の再考を求めたい。

 「性の在り方は連続的」

条例骨子案は「全ての人があらゆる場において性の多様性が尊重され、安心して生活できるよう、教育および普及啓発、相談体制の整備、暮らしやすい環境づくりなど性の多様性に係る理解増進に関する取り組みが行われなければならない」と謳(うた)っている。

いわゆる「性的少数者(LGBT)」の人権を守ることは当然である。しかし、中身を見ると、あまりの欠陥の多さに唖然(あぜん)とする。まず「目的」だ。

「性の在り方が男女という二つの枠組みではなく連続的かつ多様であり」とある。これは性別を男女二つに分ける社会通念を逸脱した考え方で、県民に理解を求めることには無理がある。条例が成立すれば、男女を前提にした性秩序や家族の破壊につながるだろう。

人間の性を「心の性」と「体の性」に分けて、その在り方は男女二元ではなく、連続的な「グラデーション」とする考え方は、昨今活発なLGBT運動の活動家たちが主張しているものだ。骨子案はこの概念を受け入れたもので、家族を否定的に捉える左派思想が自民党内にかなり食い込んでいることが分かる。

もう一つの問題は「何人も、性的指向または性自認を理由とする不当な差別的取り扱いをしてはならない」と、「理解増進」を謳いながら、実質「差別禁止条例」になっていることだ。

自民党は1年前、LGBT理解増進法案の国会提出を見送っている。野党との折衝と活動家らへの配慮から、推進派議員が「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」という、原案に入っていなかった文言を盛り込んだことに、保守派が強く反対したからだ。

何が差別になるのかという定義が明確でないことから、差別が拡大解釈され、言論・表現の自由などが侵害される恐れがあったのだ。この時は、良識派がチェック機能を働かせた。にもかかわらず、性を連続的に捉えるという法案にもなかった内容を含む条例案の提出に、県民の理解を得られるはずはない。

こうした条例が制定されれば何が起きるのか。トイレなど「女性の空間」に「女性」を自称する男性が入り込むことを容認せざるを得なくなり、女性の安全確保が難しくなる。秩序の混乱は避けられない。

 自民は良識を働かせよ

影響は学校教育にも及ぶ。骨子案は県に「性の多様性に関する理解増進のための教育の実施」を求めている。判断力の弱い子供たちに「性はグラデーション」と教えることになるのだ。パブコメで大多数が反対意見を表明したのは当然である。埼玉自民の中でも、条例案提出に慎重な議員が少なくないと聞く。良識が働くことを願う。