【社説】宇宙政策 日米協力で安全保障強化を

政府は、年末に予定する宇宙基本計画の工程表改定に向け、重点事項を決定した。

ロシアによるウクライナ侵攻などを受け、防衛力強化が求められている中、多数の小型衛星を連携させて情報収集能力を高めるシステムの早期構築や、日本が参画する米国主導の国際月探査計画「アルテミス計画」への積極的な関与などを盛り込んでいる。

衛星網で極超音速弾探知

重点事項では、宇宙空間の持続的かつ安定的な利用を妨げる脅威・リスクがこれまで以上に高まりつつあるとの認識に立ち、サイバーセキュリティーの確保など「宇宙システムの抗たん性」を強化することが重要と記した。

中国やロシアは人工衛星をミサイルで破壊する実験を実施した。衛星の残骸である宇宙ごみが軌道上に残り、有人宇宙飛行、科学、安全保障関連の任務、宇宙開発にとって長期的な脅威になっている。

同時に宇宙安全保障の確保に向け、多数の小型衛星が連携して情報を収集する「衛星コンステレーション(衛星網)」を早期に構築するとしている。2026年度までに宇宙状況監視(SSA)衛星を打ち上げ、体制強化を図る。

音速の5倍以上で飛行する極超音速ミサイルを念頭に置いたものだ。こうした兵器は中露や北朝鮮などが開発を進めており、ロシアはウクライナで使用するなど脅威が高まっている。衛星網を構築すれば探知・追尾に活用できる。

アルテミス計画については、日本人宇宙飛行士の月面着陸を20年代後半をめどに実現することを目指すとしている。岸田文雄首相は宇宙開発戦略本部の会合で、宇宙服を着ずに長期間搭乗できる月面探査車(ローバー)について「研究、開発を推進し計画に貢献する」と述べた。こうした宇宙開発を安全保障の強化にもつなげる必要がある。

日米、オーストラリア、インド4カ国の連携枠組み「クアッド」の首脳会議では、気候変動や資源利用の衛星データを交換するなど、宇宙利用の協力促進を確認した。宇宙安全保障に関しても国際連携が欠かせない。宇宙空間で中露の脅威が高まる中、日米は宇宙における国際的なルール作りを主導すべきだ。

日本は米国との協力で、人工衛星情報を共有し、不審船などを監視・探知する「海洋状況把握(MDA)」を推進する。東・南シナ海では中国が海洋進出を強める一方、米国の衛星網だけでは広範囲の情報収集が難しい。日本の衛星に対する米側の期待感は強い。

中露の脅威に対処せよ

防衛省は今年3月、人工衛星の防護など宇宙安全保障を担うための「宇宙作戦群」を発足させた。日本の衛星の位置や軌道を監視する「宇宙作戦隊」に、指揮統制を行う部隊などを新たに加えて70人規模に増強。宇宙状況監視システムの運用に向け体制を整えた。

宇宙作戦隊を「第1宇宙作戦隊」に改称するとともに、衛星に対する妨害電波の探知などを担う「第2宇宙作戦隊」を新設する予定だ。米国と共に中露の脅威に対処する必要がある。