【社説】経済安保推進法 課題多く不断の改善努力を

先端技術の流出防止や半導体、医薬品など重要物資の確保を目的とする経済安全保障推進法が成立した。経済や技術をめぐる米中の覇権争いが激化する中、日本でも経済安全保障への対応は急務である。

このため政府は「供給網の強化」「基幹インフラ設備の事前審査」「先端技術の官民協力」「特許の非公開」の4分野を柱とする法整備を行い、技術流出を阻止するとともに、先端技術の振興で日本の国際的影響力の底上げを図り、経済安全保障体制の強化を目指している。

「適性評価」の導入見送り

「供給網の強化」は、半導体や医薬品などを国が「特定重要物資」に指定する。事業者は投資計画を作成して生産体制や供給見通しなどを提示し、国が審査して条件を満たせば供給網強靱化のための資金を支援する。

「基幹インフラ設備の事前審査」は、電力や通信、金融など基幹インフラを担う企業が安全保障上の脅威になり得る外国製の設備を導入する際、国が事前審査を行う制度で、事業者には勧告・命令が出される。サイバー攻撃を防ぐための対応策だ。

「先端技術の官民協力」は、量子技術や人工知能(AI)など「特定重要技術」の研究開発を促進するため、資金支援のほか官民協議会を設置。流出防止策も規定している。

「特許の非公開」は、日本の特許制度は一定期間後に出願内容が公開され、海外に技術が流出する懸念があるため、軍事転用可能な技術について国が非公開にするものを選別し、発明の実施や開示などが制限されることに伴う損失は国が補償する。いずれの施策も違反した企業には罰則が科せられる。

推進法は2024年度までに段階的に施行される予定だが、幾つかの問題点や積み残した課題もある。経済安全保障を「わが国の独立と生存及び繁栄を経済面から確保すること」(自由民主党の提言「『経済安全保障戦略』の策定に向けて」)と広く捉えると、今回の法整備では金融や通貨など国際経済の分野の取り込みが十分ではなく、対象がほぼ経済産業者の所掌範囲に絞られたことに不満が残る。

また軍事研究を拒否する研究機関が多い現状で、軍事と民生の仕分けが難しい先端技術開発を新設される官民協議会の下でうまく進められるか気掛かりだ。重要な情報に触れる民間人を限定する制度「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」の導入が見送られたほか、情報機関を強化する施策も不十分だ。米欧との協力関係を円滑なものとするには、同制度の導入や大幅な増員により情報機関の体制強化を急ぐ必要があろう。

高い技術力の回復図れ

さらに政令や省令に委任するものが138項目もあり、裁量の幅が広く運用の仕方によっては企業活動を妨げる恐れも懸念される。経済安全保障の強化と経済活動の自由や産業振興の両立を図るには、実際の運用で民間の声を幅広く汲(く)み上げるなど不断の改善努力が求められる。

日本経済そのものを活性化させるとともに高い技術力の回復を図ることが経済安全保障にとって最強の施策であることも忘れてはならない。