
米国は今月4日、大英帝国からの独立を宣言して250年を迎えた。国家の盛衰に関して、ウィリアム・ストラウスらは概(おおむ)ね80年のサイクルがあると説いている。それを参考にしつつ、これまでの米国の歴史を振り返ると、大きく三つの時代に区分できる。
1776年の建国から1850年代までの最初の約80年間は、国家の基礎固めが優先され、欧州列強の力から生き残る外交戦略が採られた。初代大統領ワシントンは「告別の辞」で欧州の戦争に巻き込まれてはならぬと諭し、モンロー大統領は米欧の相互不干渉を宣言した。
続く第2期は1860年代から第2次世界大戦勃発まで。南北戦争が終わり、国家分裂の危機を乗り越えた米国は、産業革命で経済力が向上、またハワイ併合やフィリピンを獲得するなど対外膨張を強め、帝国主義的な発展を遂げた時代だ。
第3期は第2次世界大戦の勝利から2020年代までの80年間で、覇権国家の時代である。2度の世界大戦に勝利し英国から覇権を継承した米国は、さらに冷戦の勝者ともなり世界唯一の超大国となるが、今世紀に入り対テロ戦争で国力を消耗、その覇権に陰りが出始めた。

新たな時代迎える米国
現在の米国が第3期の末期に当たるのか、既に新たな80年に向け歩み出しているのか、判断は微妙だが、時代の転機に位置していることは間違いない。
第4期が幕を開けているとみれば、米国は?少年期?青年期?壮年期を経て?老年期に入ったことになる。覇権国家から「大国の一つ」に変わりつつある時代で、トランプ氏は老年期の米国を率いる大統領になる。
老年期に入り力の衰えが出ている米国は、今まで以上に慎重な国の舵(かじ)取りが求められるが、トランプ氏は露骨な米国一国主義を打ち出し、第3期で米国が築き上げた国際秩序や普遍的な価値観を傷つけ、国際機関も軽視、同盟国との関係さえも悪化する一方だ。
オバマ元大統領は「世界の警察官」役放棄を公言し、不用意に米国の力を低下させたが、トランプ氏も過度な自国中心主義に走り、米国の影響力を後退させている。衰退が懸念される今こそ世界秩序の維持に努めるとともに、権威主義諸国に備え、同盟国との連携や協力を強化する必要がある。米国が復権を果たすためにも、そうした賢慮を欠いてはならない。
貧富の差の拡大が深刻
圧政を逃れ海を越えて来た初期の入植者は、キリスト教の理想郷(丘の上の町)づくりを目指した。また中世を経験せず、この国には身分制秩序が不在であった。それゆえ米国はキリスト教精神に基づく「自由と平等の国」であり、アメリカンドリームが息づいていた。
しかし自由と平等は本来、両立せぬものだ。いつしか自由が平等に勝り、貧富の差が拡大、豊かな中間層やアメリカンドリームは消滅し、国内の分裂や対立が進んでいる。
国を一つにまとめるには、社会的不平等や格差の是正、つまり平等の回復が求められるが、平等の実現を看板に掲げる民主党の低落が酷(ひど)い。貧困が進み低階層に落ちた白人労働者に手を差し伸べず、大衆政党から富裕者や高学歴エリートの政党に変質してしまったのだ。
キリスト教的な平等意識の強い米国には、知的権威やエリート主義に批判的な反知性主義の伝統がある。そのため大衆の民主党離れが進み、積極的に労働者に語り掛けたトランプ氏に支持が集まった。米国社会の平等性を回復するには、民主党の再生復権が急務である。
またレーガン政権以降、新自由主義の下で富裕層を対象とした大規模減税や規制緩和策を進めたことが、少数の超富裕層と大量の貧困層を生む大きな原因となった。この弊害を改めるため、累進課税の強化など適切な所得再分配実現のための税制改革が必要ではないか。
さらに政治システムの是正も不可欠だ。米国はモンテスキューの思想を踏まえ徹底した三権分立制を取ったが、覇権国家の下で行政権が突出。特に第2次トランプ政権で議会は政府に弱腰、保守系判事の登用で司法も行政のチェックが不十分だ。米国の権威主義化を防ぐには、議会、司法が奮起し、三権のバランスを本来の姿に回復させねばならない。建国250年を迎えた米国に課題は多い。






