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米ミサイル防衛網の構築急げ 進む核拡散、抑止力に懸念

元米朝鮮半島和平担当大使 ジョセフ・デトラニ

ジョセフ・デトラニ氏 

多くの同盟国が、ロシア、中国、北朝鮮、イランの核兵器プログラムに懸念を表明してきた。その多くは、米国の核抑止力拡大へのコミットメントに関するものや、米国の信頼性への懸念という文脈からだった。

ロシアは約5580発の核兵器を保有し、1710発が配備され、ウクライナで使用すると威嚇している。

中国は核兵器を増強しており、2030年までに1000発の核兵器を保有することを計画している。北朝鮮は約60発の核兵器を保有しており、27年までに200発を超える可能性があると言われている。イランはウラン濃縮を推進しており、国際原子力機関(IAEA)の監視員の立ち入りを制限し続けている。これらの国々はそれぞれ、弾道ミサイル開発計画を持っている。ロシア、中国、北朝鮮はさらに、極超音速ミサイルや巡航ミサイルの開発を進めている。

行われぬ軍備管理交渉

米露間の新戦略兵器削減条約(新START)は26年2月に終了する。新たな兵器管理条約は検討されていない。中国は米国の軍備管理交渉の要求を一貫して拒否してきた。19年2月のハノイ・サミットの失敗以来、北朝鮮は核兵器開発計画を巡る米国との話し合いを拒否している。イランは書簡でトランプ大統領から直接交渉の要請を受けたが、拒否した。

ロシア、中国、北朝鮮は、今後も核兵器の数と精度を飛躍的に高めていくだろう。イランは依然、すぐにでも核兵器を保有できる可能性が高い。これらの「権威主義国家の枢軸」のいずれについても、意味のある軍備管理交渉は行われないだろう。

これら「枢軸国」の核開発計画は、近隣諸国にとっても懸念材料だ。韓国と日本は、北朝鮮の核のエスカレーションと挑発的な行動を懸念している。サウジアラビア、イスラエル、トルコは、イランによる核開発推進と、地域を脅かすハマス、フーシ派、ヒズボラといった代理勢力へのイランの支援を懸念している。

北朝鮮の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射実験=朝鮮中央通信が2022年1月19日に配信、平壌(AFP時事)
北朝鮮の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射実験=朝鮮中央通信が2022年1月19日に配信、平壌(AFP時事)

北大西洋条約機構(NATO)、東欧、カフカス、バルト諸国はすべて、ロシアがウクライナとの紛争に勝利した場合に、失地回復を目指してさらに活動を活発化させるのではないかと懸念している。核戦力の急激な増大を含む中国の軍備増強は、台湾と東アジアのすべての国々にとって懸念事項だ。

米国の拡大抑止の約束にもかかわらず、韓国と日本はいずれ核兵器を保有することになるだろう。台湾、ベトナム、インドネシアは、台湾に関する中国の活動や南シナ海、東シナ海での中国の行動に対抗して、核兵器開発計画の確立を検討するかもしれない。NATOは、ロシアによるウクライナへの侵略戦争を受け、ようやく国防強化に取り掛かり、国内総生産(GDP)の3%から5%を国防に費やす意向だ。イランが核兵器を保有すれば、サウジ、エジプト、トルコも核兵器を製造または保有する可能性が高い。

核兵器や核技術の拡散を防ぎ、原子力の平和利用を促進するために1970年に締結された核拡散防止条約(NPT)は、核保有国の数を制限することに一定の成果を挙げてきた。しかし、それも変わりつつある。

ウクライナが1700発以上の核兵器を放棄する代わりにロシアがウクライナに安全を保障するという94年のブダペスト覚書が守られず、ロシアがウクライナに侵攻したことで、ウクライナはすべての核兵器を放棄すべきではなかったという見方が広がっている。ウクライナが数発でも核兵器を保持していれば、ロシアは2022年2月に侵攻しなかったという見方だ。これは他国にとっても深刻なメッセージであり、抑止力としての核兵器を主張する根拠となり得る。

ロシア、中国、北朝鮮の核兵器増強、その他の国が核兵器の獲得や導入に動く可能性を考慮すると、トランプ政権は米国のミサイル防衛能力の強化に野心的に取り組むべきだ。

宇宙軍等と緊密連携を

トランプ氏の「米国のためのゴールデンドーム」は、もっと早くから推進されるべきだった。レーガン大統領は1980年代に戦略防衛構想(SDI)というミサイル防衛システムの開発を目指したが、技術が不足していた。現在、私たちはその技術を手に入れている。ミサイル防衛局は、米宇宙軍や防衛産業と緊密に連携することで、核攻撃の脅威から米国を守る機会と責任を負っている。

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