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住居に対する少子化対策

平成国際大学名誉教授 佐藤 晴彦

政府主導の積み立て方式を
シンガポールの実施例を念頭に

平成国際大学名誉教授 佐藤 晴彦

少子化傾向が進む中、新婚カップルや複数の子を持つ親の子育て費用対策の一環として、政府は子育てに必要な住宅取得の経費軽減施策を打ち出している。ここでは、住居取得についてシンガポール方式を念頭に置きながら、さらに少子化に実際に役立つ新方式を考えてみよう。

結婚前後のカップルや既婚の夫婦が子供を持とうとしない経済的な理由は、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」「自分の仕事に差し支える」「家が狭いから」の順となっている(子ども家庭庁「少子化の状況及び少子化への対処施策の概況」2022年)。

「家が狭い」は、結婚前後のカップルやさらに子供を持とうとする夫婦が住居物件を容易(たやす)く買えない、住めないことを示唆しており、結婚できない、さらに子供を持てない理由の一因である。

限界ある社会保険方式

わが国では、政府政策として住宅政策を社会保険の形で支援することは不可能である。現社会保険方式(医療、年金、福祉)は賦課方式をとっており、少子高齢化が進行している今、なおも現役世代全般に負担をかけてしまうからである。

このようなやり方とは反対に、住居取得に計画的余裕をつくり、引き落としを自由に選択できる方法があれば、それは国民に大きく役立ち、快く思われるであろう。そのような新婚のカップルや夫婦の状況に役立つのがシンガポール方式である。

坂口可奈・北海商科大学講師によると、シンガポールでは、政府主導による積み立て方式の中央積立基金が一定程度まで人々の生活を保障している。持ち家取得のため中央積立基金は強制貯蓄の役割を果たしている。

中央積立基金の口座は、通常口座、特別口座、医療用貯蓄口座の三つに分かれており、それぞれ異なった役割を持っている。中央積立基金は個人の口座だが、雇用主と労働者が共に資金を拠出するという枠組みになっている。そのうちの通常口座の預金は、住宅購入などに引き落とすことが可能なのである。

ただ、その中央積立基金の加入者の収入は人によって違うため格差が生じる。正規社員の間だけではなく、正規労働者と非正規労働者の間でも賃金に差が生じる。自営業者は任意加入となるためここでも格差が生じ、非加入の場合は自助努力となってしまう。またインフレが発生した場合のリスクは保証されなく、賃金スライドについても保証はされない、という。

このようにシンガポールの積み立て方式は結婚間近や子供数が多くなったときでも、彼らの購入タイミングの順応性に長(た)けており、この方式で準備さえしておけば誰でも物件取得が可能なのである。しかし、シンガポール方式は、貧富の差、インフレについては全く考慮されていなく、この点、わが国政府の対応が迫られる。

23年に発足した子ども家庭庁の住宅施策は、①18歳未満の子供がいる世帯または夫婦どちらかが30代の場合、金利引き下げ②公営住宅や都市再生機構(UR)の賃貸住宅を対象に、子育て世帯を優先的に入居―である。公的な住宅を増量し最優的に提供するとしている。

①では、インフレの影響を受けない金融支援「【フラット35】子育てプラス」を施行している。この制度は、子供の人数に応じて金利が引き下げられる、他のフラット35の金利引き下げメニューと併用できるなどの特長がある、という。

筆者は、「政府主導による積み立て方式の導入」と低所得者を保障する以下の2点を提言したい。

まず①はカップルが住宅ローンを組む場合、超低金利の長期固定金利の提供である。住宅ローンには変動金利と固定金利があるが、変動金利の場合、将来の金利上昇が心配になる。だが長期固定金利のフラット35は変動金利より金利は高めに設定されることが通例である。そこで政府が、新婚カップルや子供数を多く持つ場合は、あえて超低金利の長期固定金利を提供すべきである。

公営住宅提供の周知を

次に②では、住宅物件を取得できるほど余裕がない所得階層者は特に関係するが、前もって市営や公営住宅の提供を政府の側から知らせておくことである。カップルの申請があって初めて始まるのではなく、政府の方から先に通知する体制をとっておくべきである。そのためには市営や公営住宅の物件数が十分に間に合うほど準備されていなければならない。

(さとう・はるひこ)

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