
中国は自国が目指そうとする国際秩序をテーマにした白書を公表した。
この白書の中で中国は、グローバルサウス(新興・途上国)との連携強化を図り、欧米主導の国際秩序を変えていく方針を鮮明にした。
これは共産党の毛沢東が国民党との内戦に打ち勝つために打ち出した「農村から都市を包囲する」作戦の国際版といったところだ。
内戦時代、圧倒的多数の農民が居住する「農村から都市を包囲する」という共産党の「農村工作重点主義」の革命戦略が功を奏した。点在する都市は、周囲の農村という面を押さえられると情報や流通が遮断されて干上がり、息の根を止められることになったからだ。
毛に畏敬の念を抱く習近平国家主席は、国内総生産(GDP)で米国に次ぐ世界第2位になった中国を、建国100年を迎える今世紀半ばまでに、米国をしのぐ国家にするためにグローバルサウスの数の力を活用しようというのだ。これがナショナルゴールとして定めた「中国の夢」実現のためのシナリオとみていい。
白書で国連を中心とした戦後の国際秩序を守ると強調しているのも、中国と連携する国々を寄せ集めて数の力で既存の国際秩序変更へ押し出したいとの意向があるからだ。
なお白書には「世界の軍事費は急激に拡大し軍国主義が再燃、国際的な安全保障は脆弱(ぜいじゃく)な局面にある」とも記されている。中国は防衛力強化に動く日本を「新型軍国主義」などと批判しており、日本を念頭に置いているとみられる。
この「新型軍国主義」批判に対して先月末、小泉進次郎防衛相が反論した。小泉氏は中国を念頭に「核兵器と戦略爆撃機を大量に保有している国が、そのいずれも持たない日本を『新型軍国主義』と呼ぶのはおかしい」とシンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)の演説で言及した。
そもそも中国は徴兵制だけでなく、2010年に制定された国防動員法で有事の際、男性は18歳から60歳まで、女性は18歳から55歳まで国防義務を負う。わが国には徴兵制もなければ、有事の際に強制動員されることもない。
さらに中国は境界線とする「九段線」をインドネシアまで勝手に引き、南シナ海の主権と主権的権利を主張している。オランダ・ハーグの仲裁裁判所は10年前、国連海洋法条約に基づきその大半に中国の主権が及ばないと裁定したものの、中国政府はこの裁定を「紙くず」と言い放った。そして岩礁を一方的に埋め立てて人工島とし、当初は「漁民の避難基地でありミサイル配備はしない」と言っていたが、ミサイル配備を伴う軍事拠点化を強引に推し進めた経緯がある。南沙諸島や西沙諸島で権益を主張するフィリピンやベトナムなどに対して中国の海警船は、力による圧迫を続けてもいる。
「嘘(うそ)と暴力」こそ軍国主義国家の特質であり、超大国の追い落としを図ろうとする野心も同様だ。「新型軍国主義」批判は天に唾するものだ。






