日本では5月に「こどもの日」と「母の日」、6月には「父の日」と、家族に感謝をしたり健康を祈ったりする記念日が続くが、5月15日の「国際家族デー」はあまり知られていない。
国際家族デーは国連が1993年に定めた記念日で、「家族は社会の基本単位である」という考え方の下、「家族に関係した問題についての認識を高め、適切な行動をとるよう奨励することが目的である」としている。
2003年から、この日を国民の祝日に定めているのが、東アジアで唯一人口増加を続けているモンゴルだ。15年の305万7778人から25年の359万1120人と、ここ10年で約17・4%増と安定して伸び続けている。少子高齢化にあえぐ日本や韓国、中国といった近隣諸国から見れば、うらやましい限りである。
「家族の日」を国民の祝日とするだけあって、家族を大切にしようという文化的土壌が、モンゴルの安定した人口増加の背景にあることは間違いないだろう。そんなモンゴルの人々の子育て事情は、今の日本のそれとかなり異なる。家族や親戚で助け合う文化が強いので、親戚同士で幼い子供の面倒を見るのが当たり前なのだ。
都市部でも、遊びたい盛りの高校生や大学生の若者が「ドゥーゲー ハルン」(弟妹の面倒を見る)と言って友達の誘いを断ることがよくある。子供たちも幼い時に世話してくれた「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」を大きくなっても慕い、またその子供の面倒を見るという連鎖ができる。
現代の日本なら「ヤングケアラー問題」として片付けられてしまうかもしれない。しかし戦前くらいまでの日本でも、きょうだいが多いと上の子が親の代わりに下の子の面倒を見るのは当たり前だった。その経験を通じて幼い子供との接し方や愛着を身に付け、親になっても子供の扱い方に戸惑うことはなかった。現代のモンゴルは、この前時代的な日本の風景と似ていると言っていいだろう。
しかしモンゴル独自の特徴は女性たち、とりわけ母親たちが非常にアクティブで、社会で生き生きと活躍していることだ。実際、男性よりも女性の大学進学率が高い世界的にも珍しい国として知られている。
子供の面倒は親戚や親に任せて、子育て中の女性も仕事で役職に就いたり外国へ出稼ぎに行ったり、海外留学にも行ってしまう。地方の人は特に出産年齢も早く、大学在学中に妊娠出産を経験する女性も珍しくない。キャリアと家庭を天秤(てんびん)に掛けるという発想すら、彼女たちにはないように見える。
日本では今年、子供の推計人口が1329万人と過去最少を記録し、前年比35万人も少なかった。少子化の勢いは止まる気配がない。
モンゴルやかつての日本のように皆で子育てする社会を一朝一夕に復興させるのは難しいだろう。しかし、家庭もキャリアも両立するモンゴルの女性たちや家族文化から学べることはあるはずだ。
(サンデー世界日報副編集長)





