中国共産党政権はこのほど、「民族の団結」の破壊を禁じる「民族団結進歩促進法」を制定した。施行は7月1日からとなる。表向き「中華民族の共同体意識の強化」を目的としながら、中身はウイグルやチベットなど少数民族の言語や文化を奪う「同化政策」促進法だ。また、台湾に関しては「両岸(中台)の交流と協力を促し、台湾同胞の中華民族に対する帰属意識を増進する」とした。
民族団結法は就学前から義務教育まで標準中国語の使用を求め、国が編纂(へんさん)した統制教材の使用を義務化した。少数民族の言語や歴史は「尊重する」とされつつも建前にすぎず、現場での同化政策が進む。大学試験も全て中国語に統一され、そうした同化政策を追認する格好だ。
中国には有事や平時を問わず、国民を縛る法律がある。
2010年施行の国防動員法は「有事の際、国内外の中国人は国防活動(物資調達や情報提供など)に協力する義務を負う」とし、17年施行の国家情報法は「いかなる組織及び国民も、国家の情報活動を支持、協力しなければならない」とした。
注意を要するのが、この二つの法律に組み込まれている情報提供義務だ。
中国では都市部だろうが少数民族自治区だろうが、地域のあちこちに密告者を置いている。例えば少数民族の学生が多い大学や大学院などで密告者は、教師や学生の言動を調べ、共産主義青年団(共青団)書記らに報告する。教師と学生の間にくさびを打ち込み、ひいては少数民族が団結しないよう地域共同体に分断の溝を広げるのが目的だ。
今回の民族団結法も、法に抵触する行為を人々が当局に通報できるとしている。前述した2法と組み合わせると、「通報可」ではなく「通報義務」となるのは必至で、民族団結法の本質は「密告促進法」だ。
密告制度は文革時代、猛威を振るった経緯がある。子供が親を、生徒が教師を、隣人が隣人を密告することで、家族や学校、地域共同体に亀裂を生み信頼によって成り立っていた社会的活力を奪った。
さらに民族団結法には、中国国内だけにとどまらず団結を阻む外国の組織・個人に対する法的責任の追及も盛り込まれた。香港で反体制活動を取り締まる国家安全維持法(国安法)と同様に、領土を超えての域外適用規定で国際法の常識を超えている。少数民族の人権や文化・伝統の保護を理由にした西側諸国の中国批判を封印したいがためと推察される。
民族団結法は、中華民族への「侮辱」を明確に禁じている。この条文を根拠に、日本国内での台湾問題や沖縄県・尖閣諸島問題などの言論活動でさえ「民族団結を毀損(きそん)する」ものと見なされれば処罰を下すこともあり得るということだ。法律に沿わない言動や調査研究を行えば、中国国外にいる者であっても法的制裁の対象となるわけだから、明らかに言論の自由や学問の自由を侵害している代物だ。





