イラン情勢が緊迫化している。トランプ米大統領がイランに対して原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の事実上の封鎖を48時間以内に解除するよう要求、応じなければ米軍がイランの発電所を攻撃すると表明すると、イラン軍はエネルギー関連施設が攻撃されれば「中東地域で米国に属する全てのエネルギー、ⅠT、海水淡水化施設が標的となる」と警告――。
この事態はその後、トランプ氏が攻撃を5日間延期すると表明し、パキスタンなどを仲介とした交渉の成果に委ねられたもようで、依然打開のめどは立っていない。
イラン情勢の緊迫化は、原油輸入の9割超を中東地域に依存する日本にとって一大事。現に原油価格の高騰により、日用品や食品など幅広い生活必需品の値上げが加速する懸念が高まっている状況だ。
日本経済はここ数年、物価高に悩んできたが、最近になって物価高が小康状態になっていただけに、今回の事態は何とも“不運”としか言いようがない。
例えば、3月の食品値上げは、帝国データバンクの調査によると、前年同月比73%減の684品目にとどまり、3カ月連続で前年を下回った。1000品目を下回るのは、昨年11月以降5カ月連続。今年2月時点で予定を含め1~6月までの累計は4493品目と前年比6割減のペースで小康状態での推移となっている。
消費者物価も昨年12月は前年同月比2・4%上昇と3カ月ぶりに3%を下回り、今年1月は同2・0%上昇、2月は、政府の電気・ガス代補助やガソリン暫定税率廃止などもあり、同1・6%上昇と2022年3月以来、3年11カ月ぶりに2%を割り込んだ。
実質賃金は昨年11月の同2・8%減から、12月は同0・1%減と12カ月連続のマイナスになったものの回復傾向を強め、今年1月は同1・4%増と13カ月ぶりにプラスに転じ、物価高の鈍化傾向を裏付けた。
値上げ再加速懸念の高まりに、政府は国際エネルギー機関(ⅠEA)全加盟国による協調放出の一環として備蓄原油を放出。放出量は過去最大規模となる、官民合わせて約45日分、計8000万バレル程度を予定している(全加盟国では過去最大の計4億バレル)。
また、レギュラーガソリンの全国平均価格が、1㍑当たり190円80銭と過去最高となった(18日発表)こともあり、資源エネルギー庁は19~25日の店頭価格を同200円20銭と見積もり、同170円程度に抑える激変緩和措置を発動。19日から石油元売りへ補助金の支給を始めた。
値上げなど物価高は再加速するのか。イラン情勢の動向次第だが、それでなくとも、政府の電気・ガス代補助は4月に縮小し、5月にはゼロになる。ガソリンの補助金も当面は予備費で対応するが、大幅な積み増しが必要となる可能性もある。
専門家からは今後、消費者物価は3月に再び2%台となり、また小康状態の食品値上げの動きも再び値上げに踏み切る企業が増えるとの指摘が出ている。
今春闘では5・26%(連合第1回集計)と昨年並みの高水準の賃上げ回答が出ている。物価高克服にはもうしばらく我慢が必要なようだ。






