多くの犠牲を出した東日本大震災から15年。その取材の中で、ある被災地の観光協会スタッフと話していたところ、「震災の記憶の風化を防ぐというだけでなく、今後の災害に対して東日本の経験をどう活(い)かすかというフェーズに入っている」と話していたのが印象に残った。
また、別の被災地で災害伝承の語り部として活動している女性によると、発災直後はどのような被害が出ていて、その時の状況を知りたいといった質問が多かったが、時間が経(た)つと復興状況を尋ねる声が増えてきた。ここ数年は災害に対しての備えに関する質問が多いという。この15年の間に地震や水害、山火事など数多くの大規模災害が発生していることとも関係あるのか、被災地を訪れる人々の視点やニーズも、自然災害への対応策などに関心が移り変わっているのが分かる。
災害への向き合い方の中で、「レジリエンス」という概念も出てきた。災害が起きても、それをしなやかに乗り切れる強靭(きょうじん)性や回復力を表した言葉で、例えば、危機的な事態に陥った際も事業を中断せず継続したり、中断したとしてもいち早く復旧させるための方針や体制などをまとめた業務継続計画(BCP)の策定も、レジリエンスのある社会づくりの一つと言えるだろう。
2月3日には防災と官民連携をテーマとした内閣府主催のセミナーが東京都内で開かれ、「地域防災力強化に向けた地域と企業の連携」と題したパネルディスカッションが行われた。自然災害リスクの分析やBCP策定の情報提供などを行っている東京海上ディーアールの主幹研究員・指田朝久氏は、首都直下地震が起きた際のBCPのポイントとして①被災をしていない地域の日常業務は止めない②中枢機能の移転③生産拠点やサプライチェーン(供給網)の一時代替を考慮――などを挙げた。
一方で、立教大学の高岡美佳教授は、企業が地域の防災活動に取り組む上で「収益に直接つながらないことは株主たちに説明しにくいという点がある」と指摘。その解決策として、防災面で地域貢献する企業を表彰するなどの制度を整えることで「長期的にはブランドにつながると株主へ説明すれば、企業の地域貢献もしやすくなるのではないか」と提言を行った。
災害の連携という点では、宗教界も大きな役割を果たしている。現在も復興支援が進む能登半島でも、ボランティアにはキリスト教の信者や仏教関係者なども多数参加しており、ある地域では参加者の半数近くが宗教関係者だった日もあったという。もちろん布教活動でなく、自分たちの実績を誇示するためでもなく、自らの信仰と正義に基づいた善意の活動だ。
こういった宗教団体の活動はあまりメディアでは取り上げられず、SNSなどインターネット上では「被災地を利用している」と非難されたり、逆に「宗教は良いことだけ言って、被災地支援などもしない」と誤った認識もある。
東日本大震災や能登半島地震でボランティアに行った都内在住の40代男性は、現地で活動している新興宗教の信者にも会ったという。「行ってみれば分かるが、能登にはまだ大変な人たちが多い。それこそ『猫の手』も借りたい状況だ」と強調する。
大規模災害は官民問わず国民全体が力を合わせ、人々の生活を立て直さなければならない。考え方の違いもあるかもしれないが、命を守るための連携を優先し、今できる備えを平時から考えていくべきだ。






