トップオピニオン記者の視点パンダのいない日本の動物園【記者の視点】

パンダのいない日本の動物園【記者の視点】

サンデー世界日報副編集長 辻本奈緒子

ジャイアントパンダの中国への返還後、上野動物園の正門前に立てられた看板

 1月末、上野動物園生まれの双子のジャイアントパンダが中国へ渡り、半世紀ぶりに日本からパンダがいなくなった。テレビのニュースでは涙を流しながら見送る人々の映像が流れた。傍目(はため)には「そこまで?」とも思うが、実際にパンダの姿を目にすると、その可愛(かわい)らしさに心奪われるのも納得してしまう。

 同園に先駆けて昨年6月、パンダのいなくなった和歌山県白浜町の「アドベンチャーワールド」では今、同9月30日に誕生したコウテイペンギンの赤ちゃんが“客寄せパンダ”の役割を果たしている。生後100日までは毎日ライブ動画が配信され、灰色のふわふわした羽毛に包まれたその姿を一目見ようと、実際に同施設を訪れた人も少なくないようだ。かく言う筆者もその一人である。

 訪れた時はパンダがいなくなってから既に半年ほどたっていたが、まだパンダ人気にあやかろうとしている感は否めなかった。土産物店にパンダのグッズが多く並んでいるのは在庫の問題もあるだろうから仕方ないにしても、もうパンダはいないのに「パンダ推し」を引きずる雰囲気には、違和感を覚えてしまう。

 とはいえ、関西有数のレジャースポットである同施設は、ちょうど動物園と遊園地を合わせたような場所で、存分に楽しませてもらった。観覧車やジェットコースターといったアトラクションの他、動物の種類もレッサーパンダなどの小動物から馬、鳥類、象やライオン、キリンなどのいるサファリゾーンまでかなり豊富で、家族旅行やデートにもぴったりだろう。

 さらに同施設は動物の繁殖研究にも力を入れているそうで、国内最多のペンギンを飼育しているという。コウテイペンギン以外にも赤ちゃんが続々と誕生していて、新たなアイドル候補はまだたくさんいそうだ。実際、パンダがいなくなった後の昨年11月、アドベンチャーワールドの公式インスタグラムはフォロワー数が50万人に達している。

 それに比べ、心配になったのは上野動物園だ。国内最後のパンダがいなくなって初の週末、足を運んでみた。パンダを見る人々の行列がなくなったのはもちろんだが、人出も週末にしては少し寂しい気がする。土産物店のグッズや屋台の食べ物、垂れ幕やのぼりでパンダ推しを引きずっているのはアドベンチャーワールドと似ているにしても、心配なのは今いる動物たちの魅力をアピールする気概が感じられないことだ。

 高齢の動物や死んでしまった動物の看板が目立ったのも気になる。これでは来園したら目当ての動物がもういなくてがっかり、なんていうことも起こりかねない。パンダの返還は事前に分かっていたことなのだから、いつまでもパンダ人気にあやかろうとせず、他の動物たちの育成や魅力発信に切り替えるべきだろう。

 普段接する機会のない珍しい動物たちと身近に触れ合えるのは、子供たちの教育や日常生活の癒やしに大きく貢献する動物園の役割だ。各施設にはその自覚を持ち、パンダに頼らない魅力の創出と発信、観光誘致に努めてほしい。

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