新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行して2年が過ぎた。だからか、いたずらな陰謀論ではなく客観的な資料や事実を基に、コロナワクチン政策を振り返ろうという動きが出てきている。10日から全国公開予定のドキュメンタリー映画「ヒポクラテスの盲点」(大西隼監督)は、新型コロナワクチンによる後遺症の影響に、多角的な視点から迫った作品だ。
ドキュメンタリーではワクチンの安全性に疑問を抱く医師や健康被害を訴える患者、さらにワクチン接種後に家族が亡くなったという遺族へのインタビューが行われている。患者や遺族が自治体に申請する「予防接種健康被害救済制度」で、厚生労働省にコロナワクチン接種後の健康被害として認定されたのは今年9月11日時点で9200件超、死亡事例は1000人超だった。中には妻と生後5カ月の子供を残し、突然死した20代男性もいたという。健康被害を訴える男性の一人は「実際に効果があったのかが一番知りたい。あれだけワクチンを打っているのに毎日患者の数が増えていくのはどうしてなのか」と疑問を吐露する。
興味深かったのは、大西監督がコロナワクチンの有効性や安全性を発信してきた医師にも取材していたことだ。その医師はあくまで「個人の考え」と断った上で、若い男性で心筋炎が増える傾向はあったものの、ワクチンは「数千万規模の命を救った」と断言。その上で「(ワクチン接種の開始された)当時は間違いなく有効性が高く、大きな貢献をした」と強調する。日本人口の7割以上が打てば集団免疫が高まり、当時の感染力の強さから想定すると「まず流行を収束できると思った」と振り返る。
しかし、オミクロン株が出てきたことで、当初の想定より「感染予防効果がなくなった」と言及。感染リスクのある高齢者には、現時点でも使うメリットがあると主張するものの、海外渡航などを制限してきたワクチン証明書などは「感染予防効果が流行を抑えるものでなくなった時点で、撤廃すべきだった」と意見を述べた。
ちなみに、大西監督がワクチン接種を推奨する専門家や厚労省に撮影を申し込んだ際、断られた理由として代表的なものは「ワクチン接種にブレーキをかける内容が含まれることが懸念されるプログラムへの参画はご遠慮したい」だった。どのような新しいワクチンであっても、本当の意味での安全性の確認には時間がかかる。今回のように社会防衛に関わる緊急性の高い状況ならば、リスクより効果を優先したとしても責められることではない。
未知の感染症は安全保障という点で見ても、国家が対策を整えなければならない緊急事態だ。それはコロナ禍で多くの国民が実感した。もし再び別のパンデミックが起こった場合、わが国はコロナよりも的確でスピーディーかつ柔軟な対応ができるだろうか。そのためには「不都合な事実」は明確にし、可能ならば悲劇の繰り返しを避けなければならない。少なくとも「反ワク」の言葉で、全てのコロナワクチンの問題を片付ける状況から変わりつつある。未来に禍根を残さない感染症対策の検証から、政府は目を背けるべきではないだろう。
(報道部長代理)





