世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の信者を棄教させるため、職業的ディプログラマー(脱会屋)の指導を受けた信者の親類縁者が拉致監禁を実行したというケースは数多く報告されている。被害者となった信者が心に傷を負うことも珍しくなく、たとえ監禁期間が1日だけであってもPTSD(心的外傷後ストレス障害)発症の可能性があるという深刻な人権問題だ。
本紙「地裁審理で『監視』と言い換え」(3月6日付)、「陳述書に棄教強要の手口」(4月23日付)で取り上げたように、文部科学省が東京地裁に提出した陳述書には拉致監禁の体験が記されていた。信仰を捨てさせるため、信者を蔵の中に閉じ込めたりホテルの一室に押し込めたりしたという内容だったが、文科省の目には人権侵害と映らなかったようだ。
これらの陳述書に対して現役信者から反証が提出されており、その中の一人であるA子さんに話を聞いたことがある。
平成初期、A子さんが声を掛けたことを機に、教団の信仰を持つようになった女子大生がいた。だが、その女子大生は半年ほどで突然、姿を消した。何が起きたのか初めて分かったのは、女子大生の父親が書いた陳述書に目を通した時だった。脱会屋の牧師から「子供が教団に通っている」という旨の連絡を受け、親たちが娘をホテルに「保護」していた。
陳述書に目を通した時、A子さんは「彼女に申し訳ない気持ちになった」と涙を流す。信者の気持ちに寄り添わず、無理やり脱会させる一連の流れに憤りを感じる一方で、自身の責任を感じたのだという。
A子さんは「彼女と父親のことを話していた時、拉致監禁されるかもしれないと不安を抱いていた」と振り返る。しかし、特に何も手を打てず、両親が実の子を監禁するという悲劇が起きた。
陳述書によると、女子大生の両親は脱会屋の牧師から、子育てに問題があったと責められていた。しかし、「彼女はとても素直で優しい子だった。監禁などせずとも普通の話し合いで説得すれば、親の気持ちを酌んで辞めていただろう。育て方を間違えたと言われ、する必要のない監禁をすることになってしまったのではないか」と語るA子さんの苦悩は尽きない。
確かに親であれば、自分の子供を怪しげな団体から守りたいと思うのは当然だ。そういった信者の家族が一組や二組だったということはないだろう。家族側に誤解や不安があったなら、話し合いの場を設けるなどの配慮は、教団側でどの程度進められていたのか。学生ならば入信を希望していたとしても、卒業を待ってから改めて検討してもらうなど、ケース・バイ・ケースで柔軟に対応すべき事例はなかったか。A子さんのように現役の信者一人一人からも、当時の反省や改善の声が出始めている。
一方、脱会屋側は「信者の自由な意思が奪われていた」「新たな被害者を出さない必要があった」などと主張し、監禁は「保護説得」だったと頑(かたく)なに正当化する。その上で責任を求められれば、信者家族たちが勝手にやったことと転嫁する始末だ。
棄教目的で、一人の人間の自由を奪うことは許されるべきではない。脱会屋として活動していただけでなく、協力や賛同していた人々も、考えを改めていかなければならない時だ。(報道部長代理)






