編集委員 床井明男
日本人の主食であるコメの高騰が止まらない。筆者は前回の小欄(2月7日付)で、「『令和の米騒動』から半年」の題で「備蓄米放出で高値収まるか」と半ば期待を込めて執筆したが、5月12~18日に全国のスーパーで販売された5㌔当たりの平均価格は、前週比17円高の4285円と最高値を更新。前年同時期より2倍以上の値段が続く。
備蓄米放出が3月半ばに始まり、既に2カ月半。店頭価格の値下がりが期待されたが、下がったのは4月28日~5月4日の週(4214円で19円安)の1度だけ。
コメ価格が下がらない原因の一つとみられるのが、備蓄米普及の悪さだ。農林水産省によると、3月に落札された備蓄米21万2132㌧のうち、4月下旬時点でスーパーや米穀店など小売業者に渡ったのは約7%にすぎない。
全国農業協同組合連合会(JA全農)は、3月までに落札した19万9270㌧のうち、今月22日時点で10万3753㌧を卸売業者に出荷。出荷比率は52%と、8日時点の32%、15日時点の41%から上昇しているから、小売業者へは前述の7%よりは増えていると思うが、それでもわずかだろう。
ところが、備蓄米放出を進めていたトップの江藤拓農水相が「コメは買ったことがない」との失言で21日に辞任。成果も挙げず、著しく信頼を損ねる中で、バトンを引き継いだ小泉進次郎新農水相がいい立ち回りを見せている。
小泉氏は23日、随意契約で放出する備蓄米の店頭価格を5㌔当たり2000円程度にすると表明。まず30万㌧を放出し、需要があれば追加するという。売り渡し先もスピードを重視して直(じか)にスーパーなどの小売業者にし、買い戻し条件も付けないとした。
同省は26日、競争入札時の半額程度で売り渡すと公表し、契約申請の受け付けを開始すると、小売店の申し込みが殺到。2日目の27日で約70社から申し込みがあり、放出する備蓄米のうち、2022年産米の申込量が上限の20万㌧に達する見込みとなって、10万㌧放出予定の21年産米と共に申請受け付けをいったん休止するほどに。同省の見込み通り、6月2日にも2000円程度で店頭に並ぶ見通しだ。
ただ、高騰対策はこれからが本番。消費者の購入が安い備蓄米だけに集中すれば、全体のコメ価格低下にどれほど効果があるか定かでないからだ。
昨年の「令和の米騒動」以降の高値は、需給がタイトな中で、前年の天候不順などで40万㌧の不足となったことが主因。そもそもコメの供給量に余裕がないのである。
小泉氏は23日、都内のスーパーや精米店の売り場を視察後、記者団に「(コメが)なくなってしまうとの不安があるから販売を抑制せざるを得ない。こうしたマインドを変えていく」と語り、「相当大胆なことをしなければ状況は変わらない」と強調した。
が、同氏が何より取り組むべきはコメの生産量を増やす政策であり、事実上の減反政策と言われる水田からの転作補助金をやめることだ。同氏はこれにどれほど大胆さを発揮できるだろうか。