編集委員 太田和宏
文部科学省は2024年12月25日、次期学習指導要領の改訂について諮問した。26年度中には、文科省が答申を受け取り、精査の後、30年度以降に小学校から中学校、高等学校と順次実施される予定になっている。
小学校17年、中学校18年、高校19年の改訂では答申前から「アクティブラーニング」という言葉が独り歩きし、教育現場で問題解決の“万能薬”のように受け止められ、混乱が起こった。結果的に「主体的・対話的で深い学び」(アクティブラーニング)という表記に落ち着いた。
理念、考え方は良かったが、教室で実際に授業を行う段になると、先生たちの“武器”がない。大学のゼミなどで使用する「アクティブラーニング」の授業形態はグループディスカッションやグループワーク、ディベートなどを取り入れ、課題を挙げ、問題解決を行う手法だ。だが、高校以下の学校で用いるには先生の実力もそうだが、生徒自体にも力量が求められる。
次期学習指導要領で課題になるであろうことは、過労死レベルと言われる学校の先生の働き方改革と子供たちの学力をいかに底上げするかという点だ。大学入試も知識・学力偏重だったが、探求学習で何を学んだか、何ができるようになったかなどに重点を置くものが増えてきた。当然のことだが、大学の下の高校、中学、小学校、ひいては幼稚園、保育園、こども園での学びにも影響してくる。
コロナ禍を機に全国に広がった1人1台端末の支給。まだまだICT(情報通信技術)機器普及や関連ソフトの使用頻度に地域差があるものの、次期学習指導要領において“大きな武器”になるだろう。
先生の働き方改革でも力を発揮するだろう。家庭への連絡事項、アンケートの実施など質問や返事をインターネットを通じてやれば一度でクラス全員に通知できる。宿題の出題、回答も端末で一度に見ることができる。小学校高学年から専門知識が必要な算数、理科、体育、音楽、ネイティブ発音が必要な英語などの教科担任制が実施される。授業の準備に時間がかかるが、ネットで検索したり、“神的授業”を行う先生の動画を参考にしたりすることもできる。
子供たちからすると、幼稚園や保育園、こども園時代は遊びが中心で小学校に入ると学習が中心になる。小学校時代は「楽しく学ぶ」だったものが、中学になると数学や理科で公式が出てきたり、英語で文法が重視されたりするなど小中ギャップも問題になってくる。中学校から高校、高校から大学への進学でも入試の改革など変革がある。
家庭教師が付いたり、塾に通ったりで学習意欲に大きな差が出てきている。クラスでトップグループ、中程度で理解できるグループ、勉学を放棄してやる気のないグループに分かれ、中程度が少なく、フタコブラクダ型になっている。やる気のある子をさらに伸ばし、やる気を失い落ちこぼれた子の底上げをするには、個別最適な授業を進めていくしかない。全ての課題を一気に解決する手だてはない。ICT機器やAI(人工知能)を使いながらできることをコツコツ増やしていくことが近道だろう。